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菊池VS.大谷、投打で磨き合う高度な駆け引き
スポーツライター 丹羽政善

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2019/7/22 6:30
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14日にエンゼルスの本拠地で行われたマリナーズの菊池雄星対エンゼルスの大谷翔平の先輩・後輩(岩手・花巻東高)対決は、そこに高度な駆け引きが透け、見応えがあった。

6月8日の初対決では、内野安打、一ゴロを経て迎えた3打席目、連続本塁打のどよめきの中で大谷が初球のカーブを捉え、左中間へ。チーム3連発となり、結果的に大谷が菊池に引導を渡す形となった。

6月8日の初対決で四回、菊池(手前)から3者連続となる本塁打を放つ大谷=共同

6月8日の初対決で四回、菊池(手前)から3者連続となる本塁打を放つ大谷=共同

迎えた今季2度目の対戦(14日)では、1打席目が四球、2打席目が空振り三振だったが、そのときの大谷の空振りからは、2人が今後、磨き合いながら、どう成長していくのかという期待がよりいっそう湧き上がった。

それはカウント2-2からの6球目。菊池が投じた外角低めのスライダーに大谷はバランスを崩され、バットが空を切った。大谷が腰を引くようなスイングになったのは、真っすぐだと感じたからだろう。フォーシームのタイミングで振りにいったら、ボールが来なかった――。

もっとも、ヤマを張るようなカウントではない。真っすぐだと錯覚させられた、と表現したほうが正確か。だとしたら、菊池の狙い通り。菊池の側からすれば、きっちり伏線も張ってあった。

2度目の対戦となった14日、三回に菊池(18)が大谷から空振り三振を奪う=共同

2度目の対戦となった14日、三回に菊池(18)が大谷から空振り三振を奪う=共同

そこへ話を進める前に触れておきたいのが、菊池の取り組み。

一般的なスライダーの球速が80マイル台前半であるのに対し、菊池のスライダーは88~89マイルと高速だ。そして打者の手前で変化させる。ゆえに対戦した打者はカットボールと勘違いすることも少なくないが、もちろん、意図があってそういう軌道のスライダーを投げている。

この春、何度かその狙いについて菊池が、こんな話をした。「ピッチトンネルを意識してのことです」

ピッチトンネル理論で投球デザイン

ピッチトンネルとは、米データサイトの「ベースボール・プロスペクタス」が2017年1月に定義したもので、まずは、ホームベースの手前約7メートルのところに、輪があるとイメージする。直径はざっとボール2個分という。

もしも複数の球種がその狭い輪の中を通れば、打者は球種を判断することが困難となり、仮にその輪を通過してから球種を判別できたとしても、もはやボールは打者の手元にあり、反応する時間が残されていない、という距離が7メートルでもある。

その理論に沿う形で、菊池のスライダーは、真っ直ぐと同じ輪を通るようにデザインされているのだ。

菊池を指導し、最先端のデータに加え、スポーツ科学の野球への応用をわかり易く解説した「新時代の野球データ論 フライボール革命のメカニズム」という書籍の監修をした国学院大学の神事努准教授が、こう教えてくれた。

「一時期、カーブの軌道に近づいてしまって、遅く、大きく曲がっていました。そこから、日本のときと変わらないぐらいに戻りました」

曲がりが大きくなると、ピッチトンネルには入らない。その分、打者に球種のヒントを与えてしまうことになる。5月終わりには、球速も82~83マイルに落ち、投げている菊池本人が首をかしげたが、今は真っすぐと見分けのつきにくい、かつてのスライダーに戻りつつある。

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