米主導の有志連合、実現に曲折も
【ワシントン=中村亮】米政府は19日、中東のホルムズ海峡を航行する民間船舶の安全確保に向けた有志連合構想への協力を関係各国に要請した。中東地域を担当する米中央軍は監視体制を強化する「番人作戦」を目指すと表明した。イランに配慮して参加に慎重な国もあり、有志連合の形成は曲折も予想される。
米政府は19日、60カ国以上を招待して有志連合の非公開会合を国務省で開いた。中央軍は有志連合についてペルシャ湾やホルムズ海峡などの海上交通路(シーレーン)で「無害航行の確保や(監視強化による)緊張緩和」が目的だと説明した。米政府高官によると、米軍は海域の監視活動を主要任務として、民間船舶の護衛は各国に委ねる。25日に米中央軍が司令部を置くフロリダ州タンパで2回目の会合を開く。
米国のイエメン大使を務めたジェラルド・ファイエルスタイン氏は「米軍はリアルタイムでホルムズ海峡の状況を把握する高度な情報収集能力を持つ」と指摘。各国が有志連合に加わることで船舶護衛の能力を高められると分析する。米軍は5月以降、情報収集部隊を中心に計2500人の増派を表明し、無人偵察機の運用も拡大してきた。
有志連合への慎重論も目立つ。ロイター通信によるとフランスは有志連合がイランの反発を招き、中東の緊張を高めると懸念している。インドは船舶護衛のための艦船を派遣済みだが有志連合に参加しない方針だという。イランとの関係悪化を避ける狙いとみられる。
日本は各国の動向を見ながら資金協力から自衛隊派遣まで様々な対応を検討する。仮に自衛隊を派遣する場合、複数の国内法の枠組みがある。まず浮上するのは自衛隊法に基づく「海上警備行動」だ。人命・財産の保護が必要な時に船を護衛できる。日本に関係する船しか守れないが海上監視のみなら適用できる。
海賊対処法に基づく「海賊対処行動」もある。現在も海上自衛隊の艦艇がソマリア沖アデン湾で活動する。軍艦や公船を除く外国船も護衛可能だが海賊への対応に限る。
安全保障関連法で定めた「重要影響事態」「国際平和共同対処事態」は任務を後方支援に限るため、自国船の警護はできない。集団的自衛権の限定行使を容認する「存立危機事態」は日本と密接な関係にある国が武力攻撃を受けた場合など条件が厳しく認定は難しい。特別措置法は成立に時間がかかる可能性がある。
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