2019年8月22日(木)

万引き防止へ「疑い画像」共有 渋谷の3書店

スコープ
2019/7/21 11:00
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顔の画像を共有する書店は、6月から取り組みの内容を告知している(16日、東京都渋谷区)

顔の画像を共有する書店は、6月から取り組みの内容を告知している(16日、東京都渋谷区)

東京・渋谷の3書店が7月末から、顔認証システムで割り出した万引き犯の可能性のある人物の画像を共有する。その人物が来店すると店員に注意を促し、被害を未然に防ぐ狙いだ。深刻な被害が続く中での窮余の一手だが、顔の画像は法律上の個人情報にあたる。専門家は「画像が外部に漏洩すれば即、人権侵害につながる恐れがある」と指摘、厳重な情報管理など適切な運用が求められる。

3書店は東京都渋谷区にある啓文堂書店渋谷店、大盛堂書店、MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店。各店には顔認証システムと連動する防犯カメラがあり、これまで万引き行為が確認された人物の顔の画像を抽出し、各店がそれぞれに警戒のために活用してきた。

7月30日からは3店で事務局をつくって画像データを集約し、共用する。高額で転売できそうな専門書などを狙い、同じ地域の複数の店を回る万引き犯が多いためだ。系列の異なる書店が防犯カメラの画像を共有するのは異例という。

3書店などは6月の記者会見で取り組みを公表し、同月末から店頭で告知して利用客に理解を求めている。全国の書店での万引き被害額は年間約200億円に上るとされる。今回は被害の抑止が目的のため、万引き行為が記録されていても警察には提供しない。

万引き行為の画像を巡っては、被害にあったとして店側が公開し、物議を醸したケースが複数あった。特定の人物の画像を万引き犯として公開すれば、名誉毀損罪が成立する可能性があるとの指摘もあり、多くの店舗が公開を中止した。

3書店はこれまでの画像公開を巡る問題などを踏まえ、画像は3店舗内部の共有にとどめるなど個人情報保護法の枠内での運用を検討し、弁護士や政府の個人情報保護委員会と協議を重ねた。

同法は個人が特定できる顔の画像を含む個人情報を本人の同意なく第三者に提供することを原則禁じている。犯罪の経歴などは差別や偏見につながる恐れがあるため「要配慮個人情報」とされ、第三者への提供にはより厳しい制限がある。

「万引きが疑われる行為を撮影した画像は要配慮個人情報に当たらない」(同委員会)とされる。また同法は利用方法などを広く周知すれば、要配慮個人情報を含め、特定のメンバー間での情報の共用を認める。書店側は検討の結果、1カ月間の告知期間を経て共用を始めることを決めた。

SNS(交流サイト)では取り組みに賛同する声がある一方、「常に監視されているようだ」などと不安視するコメントもみられる。

個人情報保護に詳しい小林正啓弁護士は「万引きと疑われる行為の撮影画像は本人の不利益につながる情報で、外部へ漏洩した場合の影響は大きい。収集した画像の取り扱いには細心の注意が必要だ」と指摘している。

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