台湾TSMC、スマホ低迷重く 4四半期連続の減益
4~6月は10% 反転攻勢へ大型投資も

2019/7/19 2:00
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【台北=伊原健作】半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が18日発表した2019年4~6月期の連結営業利益は763億台湾ドル(約2650億円)と前年同期比10%減少した。スマートフォンの販売低迷などが響き、4四半期連続の減益となった。会社側は7~9月期に1割の増収を目指すものの、米中貿易摩擦のリスクは残っている。

「4~6月期で最悪期は脱した。足元は広い分野で需要が回復し始めている」。同日、台北市内で開いた決算会見で魏哲家・最高経営責任者(CEO)はこう強調した。

TSMCは電子機器の頭脳となる半導体の受託生産で世界シェア約5割を握り、米インテル、韓国サムスン電子と並び世界半導体の「ビッグ3」と呼ばれる。

米アップルの「iPhone」などスマホやパソコン、サーバーなど多彩な機器向けを手掛け、IT産業のインフラとされる。そのため、TSMCの決算発表での発言や業績見通しは、半導体市場を占う指標として内外の投資家が注視する。

昨年後半に世界のスマホ市場が失速。貿易摩擦による投資意欲の低下も重なり、半導体市況は悪化した。米国政府は5月に中国通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)に対する事実上の輸出禁止措置を発動した。TSMCは4~6月期、その影響を受けた格好だ。

一方で、TSMCは7~9月期の売上高の目安を開示した。試算すると売上高は最大で10%増と、市場予想を約4ポイント上回る。魏CEOは会見で「在庫消化は順調に進んでいる。今年後半には高価格帯のスマホやサーバー、IoTなどの需要が伸びる」と強調した。今春まで不調が続いた暗号資産(仮想通貨)のマイニング(採掘)向けの需要も回復傾向と説明する。

ただ貿易摩擦の影響はなお不透明で、TSMCが描く反転攻勢が実現するかは微妙だ。魏CEOは会見で、10~12月期の話題になると「不確実性が高い」と繰り返し、途端に歯切れが悪くなった。隣に座った劉徳音董事長も「米中貿易問題は需要全体に影響を及ぼしている」と発言。TSMCは顧客の製品開発段階から関わり、需要を早期かつ高精度で予測できる。顧客の間で先行きへの不安が消えておらず、本格的な在庫積み増しには慎重な姿勢がうかがえる。

TSMCの魏CEO(左)は決算会見で「4~6月期で最悪期は脱した」と話した(18日、台北市内)

TSMCの魏CEO(左)は決算会見で「4~6月期で最悪期は脱した」と話した(18日、台北市内)

半導体市場が不透明な状況下で、TSMCは成長に向け、最先端技術でライバルを突き放す姿勢を鮮明にしている。

台湾の内政部(内政省)は今月16日、北部・新竹などで総額6千億台湾ドルを超えるTSMCの最新工場の建設計画を承認した。半導体の性能向上のカギとなる微細化で、回路線幅を3ナノ(ナノは10億分の1)メートルまで狭めた製品を生産する。

現状の世界最先端は、今年秋に発売が見込まれる新型iPhoneなどが採用する7ナノ品だ。TSMCは4月に次世代の5ナノ品の試験生産を始めたが、その先を急ぐ。

追い上げる韓国・サムスン電子をけん制する狙いもある。サムスンの半導体事業は記憶を担うメモリーが主体で、頭脳となる半導体の受託生産は傍流だった。ただ足元はメモリー市況の悪化に直面し、対抗姿勢を強める。台湾の業界関係者は「サムスンはシェア拡大に向け、価格攻勢を仕掛けている」と話す。

TSMCは前期まで7期連続で純利益が過去最高を更新する安定成長を続けてきた。市況と競争環境の変化に対処できるのか。市場は注目する。

◆事業モデルに政治リスク TSMCは製品開発に必要な知的財産を世界中から収集し、米中などの有望なファブレス(工場なし)企業の半導体設計を支援して受注を獲得してきた。ただ、ハイテク分野を巡って米中の覇権争いが激化するなか、世界の企業と広範に取引する事業モデルは政治リスクに直面しつつある。
 米政府が5月、ファーウェイに対する事実上の輸出禁止措置を発動した後も取引を継続している。米国由来の部品やソフトウエアの市場価値が製品全体の25%を超えれば、海外製品も禁輸対象になるが、米国製の半導体製造装置の使用は算入する必要がないからだ。
 日韓などのサプライヤーも同様に取引を継続するが、TSMCはより敏感な存在だ。6月末の米中首脳会談で貿易摩擦が「一時休戦」となった後も、ファーウェイはリスクを減らすため部品調達の分散を模索しているが、TSMCの製品は「技術や生産能力の面で代替ができない」(台湾のアナリスト)ためだ。
 米が海外企業であるTSMCに直接、圧力をかける可能性は低いとの声は多いが、トランプ米政権の動きは予測しにくい。「あらゆる顧客のための受託生産企業」(劉徳音董事長)という長年の戦略を貫けるのか。先行きへの懸念はくすぶる。
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