2019年8月21日(水)

京アニ放火「ガソリンまいた」 「水を」逃げる負傷者

2019/7/18 21:41
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「京都アニメーション」のスタジオで火災が発生し、騒然とする現場付近(18日午後、京都市伏見区)

「京都アニメーション」のスタジオで火災が発生し、騒然とする現場付近(18日午後、京都市伏見区)

「死ね」と叫びながら男がビルに入り、火をつけた――。京都アニメーション(京都府宇治市)の京都市伏見区にあるスタジオで18日に起きた火災。ものすごい量の黒煙が一帯を包み込む中、負傷しながら逃げた人は「水を下さい」と助けを求め、近所の人らは懸命に介抱した。「怖い」「助かって」。放火したとみられる男は身柄を確保されたが、静かな住宅街を一変させた凶行に住民は沈痛な表情を浮かべた。

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「ドン。バン」。18日午前10時半ごろ、3階建てのスタジオで倉庫が倒れたような激しい音が何度も上がった。近くの住宅展示場にいた30代の男性社員は慌てて外に出た。

「助けて」「きゃー」。建物から悲鳴が聞こえた。砕け散った窓ガラス。2階から真っ赤な炎が噴き出し、すさまじい勢いで黒煙が上がった。1階の窓から、若い複数の女性がすすにまみれた姿で飛び出してきた。

2階と3階の間くらいの外壁には若い男性が必死にへばりつき、飛び降りることができず、助けを求めていた。「これにつかまって降りろ」。約10人がかりではしごや毛布を使って救助に。男性はタオルで口を押さえ、放心した様子で燃え続ける建物を見ていた。

近くに住むパートの女性(39)は職場に向かうため自宅を出た直後に爆発音を聞いた。すぐに焦げた臭いが辺りに充満。自宅に残した子どもが心配になって引き返す途中で目にしたのは、スタジオから逃げてきたとみられる男性3人だった。

「水を下さい」。3人はすすで全身を真っ黒にしたまま周囲の家のインターホンを鳴らして叫んでいた。近所の人がペットボトルの水を渡し、手当てをしていると、消防車や救急車が集まってきた。「ひどいやけどをした人もいて、とても怖かった」。女性は言葉少なに振り返る。

現場近くに住む男子高校生(16)は部活動に行くため支度をしている最中、サイレン音に気付いた。近くの公園に向かうと、数人の負傷者がベンチやシートの上に横たわっていた。悲鳴に似た声が漏れる中、住民らは負傷した人をうちわであおいだり、患部を冷やしたりして懸命に介抱した。

スタジオの前は中学時代の通学路。帰り際には窓からパソコンに触れる社員の姿が見え、あいさつすることもあったという。「救助された人には顔を知っている人もいたのに……」と沈痛な表情を浮かべた。

スタジオ近くの玩具製造会社に勤める60代の女性は、爆発直後に逃げ出した従業員の治療を手伝った。逃げ出してきた女性3人にタオルや氷を渡したが、いずれも顔や体にやけどを負い、服が焦げている人も。「はだしで何も持たずに逃げた人や路上に泣き崩れる人もいた。とにかく助かってほしい」と祈った。

火をつけたとみられる男は火災から間もなくして現場近くで確保された。府警によると、赤いTシャツにジーンズ姿だった。

スタジオから約100メートルの住宅で暮らす女性(61)は、自宅の駐車場で両足が焼けた状態の男があおむけに倒れているのを見つけた。火災の被害者だと思い、慌ててホースで水をかけたが、間もなく警察官5、6人が男を取り押さえた。

「おまえが火をつけたのか」。警察官が問いかけると、男は「ガソリンをまいて火をつけた」と答えたという。「いつもパクりやがって。あいつらが悪い」。警察官は怒ったような口調で話す男を抱えて現場まで連れて行き、侵入経路などを確認したという。

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