2019年8月17日(土)

アンワル元副首相の秘書逮捕 マレーシア、後継争い混沌

2019/7/18 18:56
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【クアラルンプール=中野貴司】マレーシア警察は18日までに、アズミン・アリ経済相が同性愛行為をしたのではないかとの醜聞疑惑を巡り、映像の拡散に関与した疑いでアンワル元副首相の政治担当秘書を逮捕した。複数の地元メディアが伝えた。アンワル氏とアズミン氏はマハティール首相の後継を争うライバルだ。醜聞騒動は与党連合内で泥仕合の様相を呈するとともに、首相後継レースも混沌としてきた。

アズミン経済相(右)の醜聞でアンワル元副首相(中央)の秘書が逮捕され、マハティール首相(左)の後継争いは混沌=ロイター

アンワル氏の秘書はアズミン氏を中傷する目的で映像拡散に関わったとの疑いが浮上している。

アンワル氏は17日、記者団に醜聞疑惑への自身の関与を否定するとともに「仮に警察の捜査で醜聞の当事者がアズミン氏だという結論になれば、アズミン氏は辞任する必要がある」と述べた。これに対し、アズミン氏は「アンワル氏は鏡に映る自分の姿を見る必要がある」と反発した。

アンワル氏はかつて「同性愛行為」をしたとして有罪判決を受けたことがある。アズミン氏の発言は過去の経緯を踏まえ、アンワル氏を公然と批判したものだ。

一連の騒動は6月、アズミン氏と外見が似る人物が同性愛行為にふけるビデオ映像がSNS(交流サイト)を通じて複数回にわたって拡散され、勃発した。直後に「映像の男性2人は自分とアズミン氏だ」と告発する男性が現れたが、アズミン氏は「私の政治生命を破壊しようとする悪辣な陰謀だ」と完全否定した。

警察は18日までに、告発した男性やアンワル氏の秘書などを逮捕し、映像拡散の首謀者の特定を急いでいる。ビデオに映る男性がアズミン氏本人かどうかは、現時点で結論が出ていない。

醜聞騒動が注目を集めるのは、マハティール首相の後継争いに大きな影響を与えるためだ。マハティール氏は2018年5月に首相に復帰して以降、アンワル氏への禅譲を度々公言してきた。ただ、副首相だったアンワル氏をマハティール氏が解任した過去があることから、禅譲シナリオの実現を疑う政界関係者は少なくない。

そんな中で、重要ポストの経済相に就くアズミン氏はマハティール氏の側近としての存在感を高めてきた。

醜聞騒動の長期化はライバル関係にある両氏に負の影響を与える。アンワル氏は秘書の逮捕によって、与党連合内での信頼や求心力が低下する可能性がある。一方のアズミン氏は仮に映像が虚偽だと証明できたとしても、一度定着した印象を払拭するのは容易ではない。イスラム教が国教のマレーシアでは同性愛に否定的な国民がなお多い。

首相候補の2氏が対立する中で、北部クダ州首相でマハティール氏の息子のムクリズ・マハティール氏は日本経済新聞に「その時々の状況によるが、私はより大きな役割を担うことにオープンだ」と発言。父親の職務を引き継ぐ可能性を否定しなかった。ただ、マハティール氏が息子を後継に据えれば、与党連合内で反発が一気に噴出するのは必至だ。アンワル、アズミン両氏以外に有力な候補が見あたらない中で起きた醜聞は政権にとって痛手だ。

米調査会社ユーラシア・グループのピーター・マンフォード氏は「ナジブ前政権とは異なる清廉な政治を訴えてきた与党連合の主張は、今回の醜聞で損なわれた」と指摘する。米中の貿易摩擦の影響などで国内経済は成長率低下のリスクが高まっており、経済政策に注力する局面のはずだが、こうした重要政策を推進する力もそがれる。

同性愛行為のビデオ拡散に端を発した与党連合内の混乱がこれ以上長引けば、国民がマハティール政権に愛想を尽かす事態にも発展しかねない。

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