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サニブラウン、はやくもスターの風格

東京五輪の顔になりそうな人が出てきた。陸上のサニブラウン・ハキーム選手(20、米フロリダ大)。自分と同じ東京都豊島区の学校を出た親近感もあって、6月末の陸上の日本選手権を現地で見た。

100メートルは五輪の花形種目だ。ほとんどの人が50メートル走を計った経験があるから、トップ選手のすごさを体感できる。サニブラウン選手は今季9秒台を複数回出している。来年の五輪で決勝に残るチャンスはありそうだ。メダル争いに日本人が絡むだけで興奮するし、意味がある。

陸上日本選手権の男子100メートルで、10秒02をマークして優勝したサニブラウン=共同

ウオーミングアップから見た。ほかの選手が互いを意識しているのが感じられる中、彼だけ泰然としていた。臀部(でんぶ)の位置が他の選手の腰の位置で、「でかい」と思ったけれど筋肉は柔らかそう。まだまだ体が未完成で、これから仕上がっていきそうな感じ。走り方はちょっとマイケル・ジョンソン(アトランタ五輪金メダリスト)をほうふつさせた。

この1年でどれだけ伸びるんだろう。彼みたいな「ダブルアスリート」は、今まで日本人が経験したことのない世界を見せてくれそうな予感もある。未知の世界への期待感を抱かせてくれるのもスターの条件だ。日本選手権は悪天候なのに1万人以上の観客が詰めかけた。その視線を一身に集め、100メートルで他を圧倒する結果を出した。これぞスターという走りだった。

200メートルは飛び抜けた選手がいないレースだったし、ライバルを視界に入れておきたかったんだろう。コーナーでは膨らんでいた。その気持ちは分かる。僕もブレンダン・ハンセン(米国、04年アテネ五輪平泳ぎメダリスト)と泳ぐ時、彼がいるコースの方に体が寄っていった。彼の体が見える位置にいたくて、無意識のうちに近づいてしまうのだ。

ライバルはいろんな場面で重要だ。サニブラウンの飛躍は、優秀なコーチ陣の存在もあろうが、米国で強い相手にもまれたことが大きいと思う。日々競り合うから、日本一決定戦でも余裕がある。彼の存在が日本の指導法にも変化をもたらすかもしれない。

実はサニブラウンのレースと同じくらい驚いたのは、陸上選手が皆、一人で黙々と練習していたこと。水泳はメニューに多少の違いはあれど基本、種目、距離、性別関係なくチーム単位で練習、行動する。そう言ったら、逆に井村久美子さん(走り幅跳び日本記録保持者)に驚かれた。

一人だと突き詰める感覚が強くなって大変そうだし、僕はつらさも楽しみも共有する仲間がいるのがよかった。振り返ると、他競技の選手にもよく「競泳は仲いいね」と言われた。僕らは珍しいのかもしれない。

(北島康介)

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