2019年8月23日(金)

山梨県の宿泊型「ママの里」 助産師24時間付き添い
健康科学大学「産前産後ケアセンター」

2019/7/19 7:10
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「おっぱいを飲んでくれない」「抱っこのしかたが分からない」――。出産後の母親に不安や悩みは多い。山梨県笛吹市の健康科学大学「産前産後ケアセンター ママの里」は、様々な悩みを抱える母親と赤ちゃんに助産師が24時間態勢で付き添う。育児のヒントを伝授し、母親自身の体調も整えてもらう宿泊型の産後ケア施設だ。

育児や授乳について助産師が24時間態勢でじっくり話を聞く(山梨県笛吹市の産前産後ケアセンター)

育児や授乳について助産師が24時間態勢でじっくり話を聞く(山梨県笛吹市の産前産後ケアセンター)

山梨県は出生数が8年連続で減少している。人口減少に歯止めをかけるため、子育て支援は最重要課題の一つだ。しかし、各市町村が個別に宿泊型の産後ケア事業を実施するのは難しい。そこで県が全27市町村と共同で「産後ケア事業推進委員会」を立ち上げ、この事業の運営を委託しているのが同センターだ。

共用の多目的ルームや宿泊室を備え、広めの部屋で赤ちゃんの兄や姉と一緒に泊まることもできる。地元温泉のジャグジー付き浴室も完備。睡眠不足の母親がゆっくり眠れる工夫もしている。同じ悩みを抱えた母親同士の交流も可能だ。

「日帰りや1泊でも利用できるが、3泊4日程度の滞在を勧めている」と榊原まゆみセンター長は説明する。初日は普段通りの生活をしてもらい、助産師が細かく観察する。抱っこの際の赤ちゃんの姿勢や抱え方、おっぱいの飲ませ方、入浴のさせ方、寝かしつけ方など、助産師が気づいた点を基に支援計画を練る。

そして滞在中に少しずつ工夫して、楽な育児の方法を探っていく。榊原センター長は「こちらの考えを押しつけるのではなく、自宅に戻って赤ちゃんと2人になっても困らないようにすることが何より大切」だと強調する。

「突然、不安になったり泣きたくなったりする」「夫が出張で夜、赤ちゃんと2人になるのが不安」と、来所した時の母親の表情は緊張した様子。しかし帰るころには「夜も話を聞いてくれて、気持ちが楽になった」(37歳の母親)、「自分が何を知らなかったのかわかった」(20代の母親)と穏やかになっていた。

原則として産後4カ月までの母子が対象で、県民であれば1泊6100円の自己負担で利用できる。料金の8割を県と市町村が助成する仕組みだ。2016年度の利用者は県内各地から延べ204人だったが、18年度は406人と倍増した。うち助成のない県外からの申し込みも9人あった。

産前産後ケアセンター 榊原まゆみセンター長

産前産後ケアセンター 榊原まゆみセンター長

それでも、榊原センター長は「利用すべき人の一部しか使ってもらえていない」と指摘する。産後うつなどの問題を抱える母親を10人に1人と想定し、出生数が年間約6000人(開所した16年)の山梨県で、利用者は少なくとも600人とみていたからだ。

「母親への告知が不十分な面もあるが、それ以上に特別な理由がないと利用できないとの誤解がある」と榊原センター長は言う。センターでは24時間の無料電話相談も受け付けている。「いつでも頼れる実家のような存在」という施設の狙いをいかに浸透させることができるかが課題だ。

《施設概要》
所在地 山梨県笛吹市石和町窪中島587の112
電話番号 055・268・3575
設立 2016年1月
職員 助産師18人(うち常勤3人)、非常勤で看護師1人、保育士2人
概要 山梨県の中央に位置する石和温泉に立地し、県全域を対象とした産前産後ケア施設。2016年に全国知事会で人口減少対策分野の優秀政策として表彰されている。

(甲府支局長 内藤英明)

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