あのカリスマが買い推奨、金急騰 - 日本経済新聞
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あのカリスマが買い推奨、金急騰

レイ・ダリオ氏といえば、カリスマのヘッジファンドマネジャーで、彼の発言がニューヨーク(NY)の株価を動かす事例も少なくない。「当たりや」として投資家から最も注目される人物の一人だ。

17日は、ダリオ氏がSNS(交流サイト)のリンクトインに長文の論文を投稿して、金を推奨したことで、NY金が1トロイオンス=1400ドル近傍から1420ドル以上まで急騰した。

ダリオ氏の論旨は以下の通りだ。

「米連邦準備理事会(FRB)が金融正常化に動いたが、道半ばで、利下げ・資産圧縮停止と逆戻りせざるを得ない状況だ。量的緩和でリスク選好は高まったが、同時に、企業・政府の債務も膨張して、中央銀行の緩和圧力を強めた。その結果、財政ファイナンスと通貨価値の下落は必至だ」

「多くの投資家が株式市場にシフトすると、リターンは逓減する。ウォール街の最長の強気相場の後で、投資として何が有効かマインド・セットを変える必要があろう。現在はアンダーウエートの資産として、私は金を挙げる。金をポートフォリオに加えることで、リスクを低減させ、リターンを上げると考えるからだ」

今年、金価格が上昇している理由を教科書的にまとめている。それが、カリスマから語られると市場へのインパクトは強まる。

投資家へのアドバイスとしては「パラダイム・シフトが起きるときには、ほとんどの人たちが過度な人気の投資に入り込みすぎて、手ひどく傷を負う。このシフトを理解していれば、うまく立ち回り、自身を守ることができよう」と述べている。

ちなみにダリオ氏は、最近「現在の形での中央銀行はいずれ時代遅れになり、MMT(現代貨幣理論)のような別の仕組みに取って代わられるのは不可避」とも発言してウォール街の話題になったばかりだ。

米中貿易戦争に関しては「中国はわれわれが引き続き投資する必要がある場所だ。中国には長期にわたって機能してきた文化とシステムがあるため、それが大きく変わると想定すべきではない。米国も同じだ。お互いを傷つけるのではなく、お互いから学び、お互いを高めるために協調・競争すべきだ」と語っている。

今年のダボス会議でもパネルディスカッションに参加して「私が長期的に最も恐れているのは金融政策の限界だ」と論じていた。

そもそもドルの代替通貨として金が買われるのも、米国金融政策への不信を映す現象と読める。

7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)を控え、ダリオ発言は、利下げ論争にも一石を投じた。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・公式サイト(www.toshimajibu.org)
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuo.toshima@toshimajibu.org

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