WHO、エボラ熱拡大で緊急事態宣言 コンゴ

【ジュネーブ=細川倫太郎】世界保健機関(WHO)は17日、アフリカ中部のコンゴ民主共和国(旧ザイール)で猛威を振るっているエボラ出血熱について「国際的に懸念される公衆衛生の緊急事態」と宣言した。終息する見通しが立たず、周辺国に感染が広がっている事態を重く見た。緊急事態の宣言は2016年2月のジカ熱以来約3年5カ月ぶり。
同日開いた4回目の専門家による緊急委員会で決めた。緊急事態は、感染症が発生国から他の国へ拡大する危険があり、国際的な対応が必要になることを意味する。WHOはコンゴを中心に各国に情報提供を促し、被害拡大防止へ対策を急ぐ。ただ、感染地域はまだ限られていることなどから、渡航や貿易の制限措置を取るのは見送った。

WHOのテドロス事務局長は記者会見で「感染拡大を防ぐために資金を含めた支援が必要だ」と強調。ワクチンも大幅に足りていないもようで、国際社会に対して協力を呼びかけた。
WHOによると、コンゴ政府が18年8月にエボラ熱の流行を宣言して以来、1650人以上が死亡し、感染者も約2500人に達している。6月にはウガンダで、今月14日にはコンゴ東部の最大都市ゴマで、感染例が確認された。今回のエボラ熱は西アフリカ諸国で13年末から約2年半で1万1千人以上が死亡した流行に次いで、史上2番目に大きい被害規模となっている。
今回のエボラ熱の流行ではWHOは緊急委を3回開いたが、緊急事態宣言は見送っていた。だが、国境を越えた感染も確認されるなど患者数は増加の一途をたどっている。感染者が相次いでいるコンゴ東部では多くの武装組織が乱立していると言われ、鉱物資源を巡る衝突が治療や予防活動を妨げている。
エボラウイルスは血液や体液を介して感染する。高熱や頭痛の症状から始まって、進行すると皮膚から出血して致死率は90%に上ることもある。
エボラ熱を巡っては日本も対策に動きだしている。政府は東京都武蔵村山市の国立感染症研究所の専用施設に、エボラ熱など最も危険とされる感染症のウイルスを輸入することを決めた。最高水準の漏出対策をした施設で保管し、国内で患者が発生した場合に備えて正確な検査や診断に活用する。多くの海外客が訪れる20年の東京五輪・パラリンピックの開催を念頭に、感染症対策を急ぐ。