新海誠監督 新作は「心配飛び越える少年少女」の物語

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2019/7/18 11:05
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世界的に大ヒットしたアニメーション映画「君の名は。」から3年、新海誠監督の新作「天気の子」が19日から公開される。

怪しげなオカルト雑誌社で働く少年・帆高は、弟とアパートで暮らす少女・陽菜と出会う(C)2019「天気の子」製作委員会

怪しげなオカルト雑誌社で働く少年・帆高は、弟とアパートで暮らす少女・陽菜と出会う(C)2019「天気の子」製作委員会

主人公は貧困など逆境にあっても前に進む少年と少女。「君の名は。」では「思いを寄せながら、すれ違う男女」という古典的ともいえるラブストーリーを壮大なスケールで描いたが、新作では今という時代に着目。主人公たちが困難な時代の中で人生を選択する姿をファンタジーで照らし出す。

社会現象ともなった「君の名は。」のヒットで「エンターテインメント作品の可能性の大きさを体感した」と語る新海監督。一方で「僕の映画を見なかった人にも(観客層が)広がり、今までにないほどの批判も浴びた」と明かす。「災害をなかったことにする映画」「代償なく死者をよみがえらせる映画」……。作品を世に問う表現者であれば批判は避けて通れないものだが、監督の意図とは違う受け止められ方に「それなりにショックを受けた」と振りかえる。

新作の製作にあたり「批判した人たちを怒らせないよう上手に映画を作るべきか否か」と迷ったという。だが「彼らをもっと怒らせるような映画にしなければいけない」との思いに行き着いた。「怒る、嫌うということは、そこに感情を大きく動かす何かがあったと思う。僕自身がやりたいことの核もそこにあるような気がした」からだ。「意図的に人を不快にするような映画を作りたいわけではない。『君の名は。』が嫌いだった人はもっと嫌いになるかもしれないけれど、それを越えて『好きだ』という人がたくさん出てきてほしい。そんな気持ちで新作を作った」と決意を込める。

祈ると晴天になる陽菜の不思議な能力をビジネスにしようとする(C)2019「天気の子」製作委員会

祈ると晴天になる陽菜の不思議な能力をビジネスにしようとする(C)2019「天気の子」製作委員会

舞台は異常気象で雨が降り続く東京・新宿。離島から家出し、怪しげなオカルト雑誌社で働くことになった高1の少年・帆高(声・醍醐虎汰朗)は、アルバイトをしながら小学生の弟とアパートで暮らす少女・陽菜(声・森七菜)と出会う。2人は貧しさにもめげず「陽菜が祈ると晴天になる」という不思議な能力をビジネスにしようと考える。

天気をキーワードにしたのは「多くの人たちが1日に1度は天気のことを口にし、気持ちや行動さえ変えてしまう」という身近さに加え「天気が変わってきた」という危機感があったという。「日本では四季の移ろいを情緒的で美しいものととらえ、僕自身もそれを映画で描いてきた。受け止め方は人それぞれだろうが、猛暑、寒波、大雨など気候変動が起きて、天気が攻撃的になってきたような感覚が僕自身にはある。その感覚を映画の中に描きたいと思った」

雨続きの不穏な雰囲気の中、それでも帆高と陽菜はまっすぐに走り続ける。「彼らを主人公にしたのは、大人の心配を飛び越えていくような人たちを描きたいと思ったから。気候変動や政治状況、年金のゆくえ。今後よくなっていくこともあるだろうけれど、悪くなっていくこともたぶん多い。僕たちはそういう場所、時代に暮らしている。どう対応したらいいのか分からない心配を、勝手に飛び越えていく人たちがいるんじゃないか、いやいてほしい。そういう少年少女を描きたかった」という。

世界から注目される日本のアニメ。新海監督も「君の名は。」でその歴史に名を刻んだ。事実、前作を製作していた時から「集まったスタッフの力量も含め、何となく『自分たちの順番がきたのではないか』という感覚があった」という。「でも、その気持ちがあったのも『天気の子』が完成する直前まで。今は(新作がどう受け止められるのか)不安の方が大きくて『自分の番だ』という気分は消えている」と苦笑する。

「自分にしか表現できない一瞬がある」と語る新海監督

「自分にしか表現できない一瞬がある」と語る新海監督

新海監督は1973年、長野県出身。自宅のパソコンでほぼ1人で作り上げた短編「ほしのこえ」で2002年にデビューした。デジタル時代の申し子として一躍注目を集め、これまでに発表したすべての作品が国内外の映画祭で受賞している。

もっとも監督自身は「自分に新しいことができると思ったことはないし、新しいことができた、新しいことをしたいという気持ちもない」と意外なことを口にする。「でも僕にしかできない、という自信も1つある」と語る。

「クライマックス場面で主人公が叫ぶある言葉がある。政治家が言ってはいけない言葉であり、報道や教科書にも書けない言葉でもある。でもそれを映画の感情の高まりの中で叫ばれると誰であれ、気持ちが少し動くと思う。絵と音と声、そしてそこに至るまで組み上げた物語という1本の映画の中で、自分にしか表現できない一瞬がある。そう自負している」と笑顔をみせた。

出演は小栗旬、本田翼、倍賞千恵子ほか。音楽は前作と同じRADWIMPS。

(関原のり子)

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