静岡県内で信金合併出そろう しずおか焼津が発足
静岡県内で信用金庫3組の合併が出そろった。16日、しずおか信用金庫(静岡市)と焼津信用金庫(静岡県焼津市)が合併し、しずおか焼津信用金庫(静岡市)が誕生した。浜松いわた、島田掛川の両信金に続く合併で、県内は9信金体制となった。新金庫は規模を生かしてシナジー(相乗効果)創出に取り組む。一方で再編論が再び浮上する可能性もある。

「ビジネスモデルは『地域密着』。規模を生かし、県中部の経済発展に一段と貢献していく」。しずおか焼津信金の田形和幸理事長(旧しずおか・理事長)は同日の合併式典でこう力を込めた。
しずおか焼津信金は、預金残高でみると浜松いわたに次ぎ県内2位の規模となる。新たに策定した中期経営計画では、最終年度の2024年3月期に預金残高(期中平均ベース)を1兆6573億円と、19年3月期の合算値に比べ9%伸ばすとした。貸出金残高(同)は7399億円と5%増やす計画だ。純利益は15億円を目標に掲げた。19年3月期の純利益の単純合算は21億円だった。
合併で職員など千人強、出張所を含め70店舗(インターネット支店除く)の体制となった。店舗網については近くプロジェクトチームを立ち上げ、統廃合計画の具体化を進める。対象となるのは近接している店舗で、2年内をメドに実施する予定だ。富士市や島田市での新規出店も検討する。合併費用は15億~16億円程度になる見通しだ。
一連の再編の動きは17年9月に始まった。浜松と磐田、しずおかと焼津がそれぞれ合併方針を公表。同年11月には掛川と島田も続いた。当時も低金利環境で、県内地銀4行との競争が激化していた。体力のあるうちに合併することが最善とみた。浜松いわたは19年1月、島田掛川は同6月に発足している。
新たに誕生した3信金に共通するのが、シナジーをどう生み出していくかという課題だ。しずおか焼津は「社風」の違いに解を見いだす。旧焼津は漁業の町で誕生した相互扶助組織が前身なのに対し、旧しずおかは静岡市が発祥の地でいわば都市型だ。牧田和夫会長(旧焼津・理事長)は「顧客との距離感も対応も違うが、それぞれの営業の仕方が通用する取引先はお互いのエリアにある」とみる。
事業承継やビジネスマッチングなど、顧客の様々な要望に丁寧に対応する「伴走型」支援を強化し、隠れた資金需要の掘り起こしにつなげたい考えだ。スケールメリットを生かし、中小企業診断士など専門資格をもつ職員を本部に集約するほか、職員のスキルアップも進める。
1月に合併した浜松いわた信金は、6月に店舗統廃合の具体策を発表。効率化で捻出する資金や職員といった経営資源を、事業承継の支援や新産業の創出・育成に振り向ける方針だ。規模を生かし、リスクを取った積極支援に踏み切る。6月に合併した島田掛川信金は企業支援の拠点を新設・拡充するほか、自治体との連携も深める。営業エリアの拡大を受けてビジネスマッチングも強化する考えだ。
県内信金の経営環境は依然として厳しい。19年3月期決算では、利回り低下に対して貸出金残高の増加でカバーしようとする姿が浮かび上がった。主力とする中小企業の業績に陰りが見えれば与信費用が膨らんで収益を圧迫しかねない。先が見通しにくいなか、安定的な経営基盤を求めて合併を模索する動きが再び出る可能性もある。
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