タイ新政権発足 5年ぶり民政復帰 異例の19党連立

2019/7/16 20:30
保存
共有
印刷
その他

【バンコク=岸本まりみ】タイで16日、プラユット新政権が発足した。3月の総選挙を経て、2014年5月に起きたクーデター後の軍事政権から5年ぶりに民政へ復帰した。主要閣僚は留任したが、政権与党は19党連立という異例の寄り合い所帯で、政権運営には課題が多い。

宣誓式を終え、写真に納まるプラユット首相(前列中央)と閣僚(16日、バンコク)=石井理恵撮影

宣誓式を終え、写真に納まるプラユット首相(前列中央)と閣僚(16日、バンコク)=石井理恵撮影

プラユット首相以下の閣僚36人は同日夜、ワチラロンコン国王の前で宣誓し、正式に就任した。新政権の発足で、軍政の最高意思決定機関だった国家平和秩序評議会(NCPO)は解散し、形式上は民政に復帰した。

プラユット首相は25日にも施政方針を演説する。15日にはテレビ演説で「経済問題や福祉など国が直面している課題に取り組む」と語った。安全保障を担当するプラウィット副首相、経済担当のソムキット副首相らは続投し、主な政策は継続される見通しだ。

軍政が持っていた超法規的な非常大権はNCPO解散によって消滅した。今後の政策執行や法案は国会審議など民主的な手続きに沿って進められるが、新政権は行く手に不安を抱える。

第一は政権運営の安定だ。プラユット氏を首相候補に担いだ軍政の事実上の承継政党「国民国家の力党」は総選挙で第2党となったが、連立工作で第1党のタクシン元首相派のタイ貢献党を上回り、政権与党についた。

ただ下院(定数500)のうち与党は254議席で、安定多数とされる280議席にはほど遠い。もし新会計年度(19年10月~20年9月)の予算案を通せなければ「新政権に大きなダメージとなる」(在タイ外交筋)。

第二は減速する景気のてこ入れだ。14年に1%だった国内総生産(GDP)伸び率は18年には4.1%まで持ち直したが、米中貿易戦争やバーツ高が主力の輸出・観光に逆風となった。タイ中央銀行は6月末、19年の予想成長率を従来の3.8%から3.3%に引き下げた。経済が失速すれば最低賃金の引き上げや所得税減税など公約の実行もおぼつかなくなる。

第三はクーデター後に冷え込んだ欧米との関係修復だ。民主化の後退を批判した欧州連合(EU)は自由貿易協定(FTA)交渉を中断。先進国からの投資も冷え込み、軍政下の5年間の直接投資額の平均は前の5年間(09~13年)と比べ36%減った。一方、バンコクを起点とする高速鉄道計画に中国が関与するほか、潜水艦3隻を購入するなど安全保障でも中国との接近が目立つ。

過去2度のクーデター後、軍は暫定政権の後見役に徹し、失敗した。プラユット氏は改革遂行のため、自ら暫定政権を率いることを選んだ。プラユット氏の「改革」とは、守旧派が新興派のお株を奪い、格差解消で分断を埋めることだった。

ただ格差問題は成果があがったとは言えない。所得格差を示すジニ係数(1に近いほど不平等)は、社会不安の警戒水域といわれる0.4付近にはりついたままだ。

16年の相続税に続き、20年には固定資産税も導入するが、税率は当初の想定より低いなど格差是正はほとんど見込めないといわれる。17年7月の世論調査では「国民和解は進んだと思うか」という問いに、74%が「そう思わない」と回答した。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]