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星奈津美さん「世界選手権、東京へ勢いづく泳ぎを」

12日に韓国・光州で開幕した水泳世界選手権。メダルラッシュが期待される競泳ニッポンは21日から登場する。競泳陣にとって、今大会は金メダルを獲得すれば来年の東京五輪代表に内定する、いわば五輪前哨戦。2012年ロンドン五輪、16年リオデジャネイロ五輪連続銅メダルの星奈津美さんに、大会の見どころを語ってもらった。

2年に1度行われる世界選手権。五輪前年の大会は選手にとって予行練習のようなものだ。最終ゴールの五輪をイメージしてスケジュールを組み、予選、準決勝、決勝の3レースも来年を想定しながらプランを練る。現役時代、私はこの予行練習で理想の8割ぐらいのパフォーマンスができれば、という考えでいた。一方、世界のトップ選手たちも目の色を変えて挑んでくるため、2年前よりかなりハイレベルな戦いになる。

瀬戸は6月の欧州遠征で自己ベストをマーク=共同

日本男子のエース、瀬戸大也(ANA)も五輪に向けてギアを上げてきた一人だろう。6月の欧州遠征では、400メートル個人メドレーで4分7秒95をマークし、自己ベストを更新した。世界選手権に向けた厳しい泳ぎ込みで疲れがたまる時期、しかも400メートルというタフな距離でこれほどの記録を出すというのはかなり調子が上がっている証し。「あと3秒は縮められる(4分6秒05の日本記録を更新する)」という驚きの発言も飛び出しているが、そこには15年大会のように金メダルを取って代表を内定させたい、という強い意志が感じ取れる。

瀬戸にエースの自覚

最も得意とする400メートル個人メドレーで最大のライバルとなるのが同い年のチェース・ケイリシュ(米国)。五輪で23個の金メダルを獲得したレジェンド、マイケル・フェルプスの後継者として近年は堂々たるたたずまいを見せ、17年大会、18年パンパシフィック選手権と瀬戸に連勝中。萩野の日本記録を超える4分5秒台の自己ベストを持つ彼に勝つのは決して簡単ではない。ただ、今年の瀬戸はこれまでともに戦ってきた萩野が不在の中キャプテンを務め、エースの自覚が生まれている。好調を持続できれば、金にも手が届くはずだ。

女子200メートル、400メートル個人メドレーに出場する大橋悠依(イトマン東進)は、4月の日本選手権では暗い表情や発言が目立ったが、記録自体は決して悪いものではなかった。むしろこれまで400メートルで日本記録を2度も更新してきた中で、記録が停滞する時期があるのは自然なこと。本人から話を聞く機会があったが、6月の米国・フラッグスタッフでの高地合宿では4月の経験を発奮材料にして充実した練習が積めたという。

金メダル争いは「鉄の女」とも呼ばれる絶対女王、リオ五輪金のカティンカ・ホッスーとの一騎打ちになりそう。大橋の持ち味といえば、ゆったりとした大きなフォーム。最初のバタフライからスピードに乗り、背泳ぎではテンポ良いリズムを意識する。余裕を持って平泳ぎ、最後の自由形とつなげば、たとえホッスーが先行したとしても追い抜くチャンスがあるはずだ。

急成長を遂げた大本

個人メドレーでもう一人、今大会での爆発が期待できそうなのが、200メートルに出場する大本里佳(イトマンSS)だ。14年以来の代表だが、この冬から驚くほど急成長を遂げて自己ベストを連発し、一気に存在感が増している。すらりと背が高くて細身な体形は一見、大橋と似ているようにも感じられるが、ゆったりとしたフォームの大橋に対し、大本の泳ぎはストロークが力強い。対照的な泳ぎをみせる2人が切磋琢磨(せっさたくま)しながらともに表彰台に立つ光景を心待ちにしている。

大本の泳ぎはストロークが力強い=共同

好調の要因の一つがスタートから浮き上がりまでのドルフィンキック。大本は50メートル、100メートル自由形にも挑むが、あの浮き上がりの技術は世界のスペシャリストたちの中でも引けを取らないレベルだ。スタート台を勢いよく飛び出し、序盤からスピードに乗ってライバルたちと競り合う姿もぜひ見てみたい。

個人的には男子50メートル、100メートル自由形に登場する塩浦慎理(イトマン東進)にも注目している。昨秋にへんとう周囲膿瘍(のうよう)で手術後、4月の日本選手権で50メートルの日本記録を更新。病気から復活を遂げた姿が(バセドウ病で手術した)4年前の自分と重なる部分がある。本人が「泳げない時期にいろいろ考えてリセットできた」と話していたが、プールから離れる中で改めて練習できる幸せをかみしめていた。体重は8キロ落ちたそうだが、もともとのパワーは維持しつつ、以前よりも泳ぎに軽さを感じる。自由形で日本記録を更新したという経験を生かし、今回も好結果につなげてくれたらと思う。

今大会で優勝すれば東京五輪の代表に内定する。私も15年大会で勝ってリオ五輪の切符をつかんだことで、バタフライの腕の入水を改造するなど新たな試みを始めることができた。五輪まで他の選手よりも余裕を持ってトレーニングできるのは、大きなアドバンテージになる。

メダルの色に限らず、今回良い結果が出れば来年へ視界は大きく開ける。東京へとステップ、大きく勢いをつけるような泳ぎを選手たちに期待したい。

星奈津美(ほし・なつみ)1990年埼玉県越谷市生まれ。五輪は08年北京大会から3大会連続で出場。12年ロンドン大会では200メートルバタフライで銅メダル、16年リオデジャネイロ大会でも同種目で銅メダルを獲得した。同年10月に引退後、現在は解説者などとして活動する。

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