2019年8月21日(水)

増えるキャッシュレス巧者 還元以外の便利さ見抜く

消費を斬る
日経MJ
コラム(ビジネス)
2019/7/16 4:30
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NIKKEI MJ

新規参入が相次ぎ、少しずつだが利用者が増えてきたキャッシュレス決済。現金を持ち歩く煩わしさから解放されるほか、昨年末からは大型の還元キャンペーンによるユーザーの奪い合いも話題だ。だが、キャッシュレスの魅力はそれだけではない。独自の工夫で現金にはない便利さを見いだす「キャッシュレス巧者」たちも目立ってきた。

「自分の年収を考えると背伸び気味の価格だったが、迷いはなかった」。2017年、東京都内に2LDKのマンションを購入した会社員の蓮見秀之さん(30)は話す。人生最大級の買い物をするにあたって背中を押してくれたのは、キャッシュレスだった。

蓮見さんが登録済みの決済サービスは約10種類。家計簿のクラウドサービスと連携すれば、お金を使った瞬間にデータとして記録され、手間をかけずに日々の家計簿ができあがる。

蓮見さんは蓄積データをもとに100歳までの収支シミュレーションを作成

蓮見さんは蓄積データをもとに100歳までの収支シミュレーションを作成

「自分のお金の使い方のクセがつかめた」という蓮見さんは表計算ソフトを使い、自身が100歳を迎えるまでの収支シミュレーションを作成。人生のどの段階で、いくらまでならお金を使えるかを明確にした。蓮見さんは「現金ではここまで精緻に記録できない」と話す。「キャッシュレスのおかげで『人生100年計画』を立てられた」

送金機能に注目する利用者も。ネット企業勤務の額賀智史さん(30)にとって「キャッシュレスは幹事好きな人間に欠かせないツール」だ。

たとえば4人でJリーグの試合に出かける場合、幹事が立て替えるお金は交通費込みで5万円近くにのぼることも。従来は試合当日に現地で落ち合った際、現金で受け取っていた。ただ、ときには急な仕事や体調不良による欠席もありうる。年10回はJリーグの試合に足を運ぶ額賀さんにとって、幹事を務めるのが「精神的にも金銭的にも負担になっていた」。

そこで額賀さんが4年前から利用するのが「LINEペイ」だ。「チケット取れたよ」と伝えるのと同じメッセージ画面で、そのまま送金を依頼できる手軽さが魅力。請求ミスを避ける上では、支払い記録が逐一残るのも安心材料になる。

「きょうは銭湯に行っておいで」。そんなメッセージと共に「ペイペイ」で娘(19)に数百円を送金しているのは都内の企業に勤める女性(43)。従来なら、残業が見込まれる日は出勤前などにあらかじめ現金を渡していた。だが仕事というのは大抵予定通りにはいかないもの。銀行振込では他行宛ての場合で100円超の手数料がかかる。少額の送金には割が合わなかった。

会社員の女性は日々の買い物代についても、キャッシュレスで娘に送金

会社員の女性は日々の買い物代についても、キャッシュレスで娘に送金

「最近は近所のドラッグストアがスマホ決済に対応した」。化粧品や日用品など、娘に買い物を気軽に頼めるようになったと喜ぶ。

キャッシュレス推進協議会によると、消費者がキャッシュレスを使い始める最大のきっかけは「ポイント付与など日常的にお得だから」(63%)。だが交通系ICカードも、高速道路の自動料金収受システム(ETC)も、「現金にはない便利さを消費者が知ったから普及した」(決済事業者)。本格的な脱・現金社会を目指すうえでは、キャッシュレス巧者たちがすでに見いだした便利さをこれからの利用者に広く知ってもらう取り組みが欠かせない。

(藤村広平)

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