2019年7月21日(日)

フィリピン薬物捜査、国連調査へ 国際社会圧力強まる

東南アジア
2019/7/12 17:19
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【マニラ=遠藤淳】フィリピン政府の薬物捜査手法を巡り、国際社会の圧力が強まっている。国連人権理事会は11日、国連による調査を求める決議案を賛成多数で採択した。ドゥテルテ政権発足後、薬物捜査で当局に殺害された容疑者は6600人を超え、人権侵害との批判が広がる。比政府は決議に反発し、死者が出るのもいとわない強硬な捜査を続ける方針だ。

フィリピン警察の薬物捜査で犠牲になった女児の眠るひつぎ(5日、北部リザール州)=ロイター

フィリピン警察の薬物捜査で犠牲になった女児の眠るひつぎ(5日、北部リザール州)=ロイター

国連人権理事会はフィリピンの人権状況について議論。アイスランドが提出した決議案を採択し、超法規的殺人を防ぐ対策をとるよう比政府に促し、国連機関の調査に協力するよう求めた。人権高等弁務官には2020年6月の人権理事会で報告するよう要請した。

採決では、欧州などの18カ国が賛成、中国など14カ国が反対、日本など15カ国が棄権した。

決議を後押ししたのが、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルが8日発表した報告書だ。調査した20件の事例の半分が超法規的殺人だったとみられると指摘。「超法規的殺人が横行し、貧困層が犠牲になっている」として国連に調査するよう求めていた。

ロクシン外相は11日夜、声明を出し、「誤った情報を引用した結論ありきの決議だ」として受け入れを拒否した。「自らの過去の行いを忘れ、新興国が(国内問題の対処に)立ち上がることを認めない西洋諸国の傲慢さが背景にある」と激しい口調で非難した。

フィリピンの強硬な薬物捜査を巡っては、国際刑事裁判所(オランダ・ハーグ、ICC)が18年2月に予備調査を始めている。比政府は反発し、19年3月にICCから脱退した。国連の調査が加われば、国際社会の圧力が強まるのは必至だ。

ドゥテルテ大統領は「国民は薬物の危険にさらされている」として強引な捜査を続ける方針だ。強気の姿勢を支えるのが、国内の高い支持率だ。民間調査会社が6月行った世論調査では、同氏を支持するとの回答が80%、不支持は12%だった。6月末で6年の任期を折り返したが、異例の高さを維持する。

首都マニラ隣のリザール州で6月末、警察が麻薬密売の容疑者宅に踏み込んだ際、3歳の女児が撃たれて犠牲になった。国民の間で批判の声が上がったが、広がりは欠いている。18年末の世論調査では、居住地域で薬物使用者が1年前より減ったとの回答が66%にのぼった。治安改善につながる薬物捜査は一定の理解を得ていると言える。

今後、国際司法裁判所や国連人権理事会が現地調査を進めて報告書をまとめる見通しで、国際社会の圧力は一段と強まる。ドゥテルテ氏は国内の人気を背に外圧をかわし続ける構えで、国際社会との溝が広がりそうだ。

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