消費者庁の全面移転見送りへ 徳島オフィスは研究拠点に
政府は消費者庁の徳島県への全面移転を見送る方針だ。危機管理や国会対応に支障が出るおそれがあると判断した。県庁内に試験的に設けた「消費者行政新未来創造オフィス」は消費者政策の研究充実に向けて、2020年度から恒常的な拠点とする。消費者行政に携わる人材の交流や国際共同研究の機能も広げる。
政府は人口の東京一極集中を抑える狙いで、国の機関の地方移転の推進を掲げている。消費者庁は16年に決めた基本方針で移転構想を明記した。17年に50人規模のオフィスを設けて効果を検証し、移転の規模や可否を検討してきた。
消費者庁は全面移転すると、健康被害が発生した際の危機管理や国会対応が難しくなると結論づけた。企業や関係団体が東京に集中するため、行政処分や調整といった業務の効率が下がる課題も踏まえた。
徳島県に置くオフィスは20年度から消費者政策の研究拠点と位置づける。デジタル化の進展を見据え、電子商取引などに関する政策の立案機能を強化する。企業、学術機関からも研究者を受け入れ、人員を増やす。
国の機関の地方移転を巡っては、文化庁が21年度までに京都市への移転を予定する。中央省庁の全面的な移転は文化庁のみとなる。検討候補に挙がった特許庁や観光庁などは16年の基本方針で断念していた。