2019年8月24日(土)

実体経済へ「負の連鎖深刻」 日銀09年1~6月議事録

2019/7/16 8:51
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日銀は16日、2009年1~6月の金融政策決定会合の議事録を公開した。金融市場がまひした08年9月のリーマン・ショック直後と比べ落ち着きを取り戻しつつあったが、金融の危機が実体経済に波及。企業の資金繰り難が深刻になっていた。日銀は「最大限の貢献」と「中央銀行の任務」のはざまで葛藤しながら、異例のリスク資産の買い取りに踏み切っていく。

日銀の白川前総裁(2009年2月)

日銀の白川前総裁(2009年2月)

日銀はリーマン危機後、激論の末に2度の利下げを実施した。すでに政策金利は危機前の0.5%から0.1%まで下がっていた。ただ金融発のショックが企業の資金繰りなどにも広くおよび「金融と実体経済の負の連鎖は深刻さを増している」(亀崎英敏審議委員)との厳しい認識が広がった。

トヨタ自動車のような大企業ですら思うように資金調達できない。「利下げの効果を最大限に引き出すためにも企業金融面での目詰まりを解消することが必要」(山口広秀副総裁)との認識から、日銀は1月の会合で企業が資金調達に使うコマーシャルペーパー(CP)などを最大3兆円買い取ることを決めた。

銀行がCPを引き受けやすい環境をつくり、企業にお金を円滑に回すことを狙った。ただ議事録には「異例の措置」(須田美矢子審議委員)との表現が頻繁に登場する。白川方明総裁も「損失発生を通じて納税者負担が生じる可能性が相対的に高い異例の措置」と述べた。発言には、従来の中銀の任務を超える対応へのためらいがにじむ。

日銀はCPや社債を担保にした資金供給からCPの買い取り、そして社債の買い取りなどその後も「異例の措置」を繰り出す。だが、会合ごとに進める対策は市場に「出し惜しみ」と受け止められた。そのたびに円高が進んだこともあり、白川氏も「日銀は『庭先きれい論』だと言われがちで、情報発信は難しい」と心情を吐露している。

日銀は異例の手立てを講じたものの、その後も実体経済の悪化には歯止めはかからない。日銀がまとめた08年度と09年度の経済成長率見通しはマイナス1.8%、マイナス2%と戦後最悪。「手が震えてくる」(水野温氏審議委員)ほどの経済の悪化に「何が起こるか分からないことに対する不確実性も非常に大きい」(白川氏)と悲観的な空気が広がる。

09年は危機の震源地である米国でオバマ大統領が就任した。会合でも米国の大規模な経済財政対策に期待する声が多かったが「米欧以上に景気の急速な悪化に直面している」(山口氏)のが実態だった。

当時の日銀としては思い切った措置を繰り出したのに、市場では小出しの対策だと見透かされた。その教訓が現在の黒田東彦総裁が異次元と呼ばれる大規模緩和に踏み切った背景にある。米連邦準備理事会(FRB)による利下げ観測が高まっている現状は、日銀の政策運営を難しくしている点で当時と重なる。

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