2019年7月20日(土)

台湾の蔡総統、米接近で支持集め 総統選まで半年

米中衝突
中国・台湾
2019/7/11 19:00
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【台北=伊原健作】台湾の次期総統選で再選を目指す蔡英文総統が、米国と接近して支持を集める戦略を打ち出している。11日からの外遊では米に立ち寄り、関係強化を内外にアピールする。香港での反中デモ拡大を受け、台湾でも中国への警戒感が高まる。蔡氏は米との関係を深め、親中色が強い野党との違いを打ち出す。投開票が半年後に迫るなか、米中対立が選挙戦を左右する構図が一段と鮮明になる。

カリブ海4カ国歴訪の出発に前に談話を発表する蔡英文総統(11日、台湾北部の桃園空港)=総統府提供

「『外部勢力』の脅威に直面するなか、理念の近い国と協力して民主制度を強固にする」。蔡氏は11日、ハイチなどカリブ海4カ国歴訪への出発前に談話を発表した。中国の圧力を背景に、2016年の政権発足から5カ国との外交関係を相次ぎ失った。直接訪問で関係をつなぎ留める狙いだが、真の狙いは経由地として立ち寄る米との関係強化との見方がある。

蔡氏は往路でニューヨーク、復路でコロラド州デンバーに立ち寄る。台湾メディアはデンバーで共和党のコリー・ガードナー上院議員と会う可能性があると報じている。

蔡氏は外遊の際、度々米に立ち寄って交流している。16年にはフロリダ州マイアミで共和党のマルコ・ルビオ上院議員と会見し、今年3月にはハワイでハワイ州軍のローガン少将と会談した。「一つの中国」原則を掲げる中国はこうした動きに反発してきた。

米中は6月末の首脳会談で貿易戦争の「一時休戦」で合意したが、トランプ米政権は今月8日に台湾への22億ドル(約2400億円)相当の武器売却を発表。安全保障面で中国への圧力を維持する構えを打ち出した。蔡氏にとって、今回の外遊は米との関係をアピールする好機となる。

経済政策への不満などで蔡氏の支持率は低迷してきたが、今年に入ってからは復調が鮮明だ。きっかけは、1月に中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が演説で「一国二制度」を用いた台湾統一の推進を明言したことだ。

6月上旬には香港で中国本土への容疑者移送を可能にする「逃亡犯条例」改正案の撤回を求めるデモが激化したことも、台湾の人々の対中警戒感を刺激している。

台湾で中国への警戒感が高まっていることは、中国と距離を置く与党・民主進歩党(民進党)の蔡氏には追い風になっている。対米接近には中国への強硬姿勢を打ち出し、20年1月の総統選まで追い風を持続させる思惑も透ける。

シンクタンク台湾民意基金会の6月の調査では、蔡総統の支持率は47.7%と、約1年8カ月ぶりに不支持率を上回った。総統選での再選に望みが出てきている。

一方、ライバルで対中融和路線の最大野党、国民党のある立法委員(国会議員)は「香港デモが選挙直前に起これば勝ち目がなかった。投開票まで半年あれば対中警戒感も落ち着くはず」とみる。

同党の公認候補を決める予備選では高雄市長の韓国瑜氏と鴻海(ホンハイ)精密工業の郭台銘(テリー・ゴウ)氏が接戦となっており、15日にも結果が判明する。

米と接近する蔡氏の戦略はリスクも伴う。貿易などで米中が融和に動き、米が中国への配慮から台湾と距離を置けば、「中国をけん制する駒として使われているだけだ」という国民党側の批判の説得力が増しかねない。米側は戦闘機「F16」の台湾への売却を検討中で、当面は売却が実現するかが米側の姿勢を測る試金石となる。

総統選は東アジアにおける米中の勢力争いにも影響する。台湾は中国の海洋進出の出入り口に位置し、親中的な国民党が政権を奪取すれば中国側に追い風となる。一方で米側は「インド太平洋戦略」での台湾の貢献に期待する。台湾が親中に傾くのを望まないとの見方が強く、選挙戦には米中の思惑が影響を及ぼす可能性がある。

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