2019年8月23日(金)

米、10年ぶり利下げ検討 市場が「複数回」圧力

トランプ政権
2019/7/11 21:51
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FRBのパウエル議長=AP

FRBのパウエル議長=AP

【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)が7月末の会合で10年ぶりの利下げを検討する。パウエル議長が金融緩和の必要性に言及しており、0.25%程度の利下げの予測が多い。市場はその後も追加の金融緩和を見込み、FRBは利下げを先取りする催促相場と向き合わざるを得ない。再選を目指すトランプ大統領の緩和圧力も強く、FRBの政策余地が狭まっている面がある。

10日午前、パウエル議長は米下院金融サービス委員会で「金融緩和の必然性が高まっていると判断している。貿易摩擦などが引き続き米景気の先行きの重荷となっている」と述べた。市場は同議長が早期の利下げを示唆したと受け止めた。

10日午後には6月中旬の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨を公表し、「景気の不透明さが続けば、金融緩和が近く正当化されるだろう」と明記した。

「近く正当化される」との表現は、次回会合での政策変更を強く示唆する定番文句だ。FRBが7月30~31日の次回会合で利下げする可能性が濃厚と判断できる。

市場の焦点は早くも利下げ幅に移っている。先物市場では7月末の会合で「政策金利を0.25%下げる」との観測が71%にのぼり、0.5%の大幅な下げとの見方は29%ある。6月のFOMCで利下げを提案したセントルイス連銀のブラード総裁は0.25%の幅を主張しており、ひとまず同案が主軸になりそうだ。

もう一つの焦点は、利下げサイクルの期間だ。クラリダ副議長ら執行部は景気減速を未然に防ぐ「予防的利下げ」と表現しており、1回か2回の短期的な利下げを想定しているようだ。

市場はその先をいく。金利先物は年内合計で約0.7%、今後2年では1%程度の利下げを織り込む。20年秋の大統領選を意識し、「1%程度の利下げ」を要求するトランプ大統領の主張にさや寄せする動きだ。

FRBが利下げを決断すれば、金融危機直後だった2008年12月以来、10年半ぶりとなる。緩和政策は量的緩和第3弾(12年9月~14年10月)が最後で、15年末からは利上げを再開して政策金利を2.25~2.50%まで引き上げていた。基軸通貨ドルを抱えるFRBが再び利下げに転じれば、日銀や欧州中央銀行(ECB)を巻き込んで世界的な緩和競争に突入する可能性もある。

FRB内には早期利下げに異論も残る。6月の雇用統計は就業者数が前月比22万人増え、労働市場の好調さが鮮明になった。ただ市場はパウエル議長の利下げ示唆をより重視する。米ゴールドマン・サックスのヤン・ハチウス氏は「米中貿易協議の再開や良好な雇用統計でも7月利下げのシナリオは揺るがない」と指摘。FRBは7、9月の会合でそれぞれ0.25%利下げすると予測する。

パウエル議長が利下げを先送りする選択は狭まっている。金利先物市場では「7月末の会合でFRBが利下げする」とみる確率が100%。貿易摩擦で企業心理が冷え込みかけており、利下げを先送りして株安まで引き起こせば、米経済はいよいよ失速しかねない。

パウエル体制が早期利下げでホワイトハウスの圧力をかわそうとしても、トランプ氏は「長期利下げ」を求めて政策介入を続ける可能性がある。利下げが長期にわたると、景気後退局面などでの政策余地を狭めることになる。こうしたFRBの苦悩をよそに、米政権や市場の利下げ論は勢いを増すばかりだ。

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