2019年8月24日(土)

ANA、国内線と国際線のシステム共通化へ

BP速報
2019/7/11 13:24
保存
共有
印刷
その他

日経クロステック

ANAホールディングス(ANAHD)の片野坂真哉社長は2019年7月10日、「IT Japan 2019」(日経BP主催)の基調講演で同社のデジタルトランスフォーメーション(デジタル変革、DX)に対する取り組みを紹介。これまでの常識にとらわれず新たな考え方を育んでいくこと、失敗しても恐れず挑戦を続けていくことの重要性を説いた。

「IT Japan 2019」の基調講演に登壇したANAホールディングス(ANAHD)の片野坂真哉社長(撮影:井上裕康)

「IT Japan 2019」の基調講演に登壇したANAホールディングス(ANAHD)の片野坂真哉社長(撮影:井上裕康)

■ANAの成長の陰にDXあり

同社は1952年にヘリコプター2機で創業。86年には国際線に参入し、直近では19年3月期の連結売上高が初めて2兆円を突破し、営業利益は4期連続最高益を記録するなど成長を続けている。その過程で同社は、IT(情報技術)などの活用によるサービスや働き方の変革、今で言うDXを繰り返してきたという。

片野坂社長はそうした過去のDXの例として、操縦系をデジタル化したボーイング767の導入によるパイロット3人体制から2人体制への移行、マイレージシステムの導入によるマーケティングの高度化、自動チェックイン機やチケットレス搭乗サービスによる空港業務の効率化、需要に合わせて販売を管理するレベニューマネジメントシステムの導入による搭乗率の向上などを挙げる。

さらに今後も成長戦略の一環としてDXを進めていく姿勢を片野坂社長は示す。例えば「OneID」と呼ばれる空港の出発動線の顔認証システムの準備を進めているという。さらに予約・発券・チェックインなどを担う旅客系基幹システムについて「現在は内際(国内線・国際線)が分かれているが、これを1つにするのが長年の夢だ」と述べた。

「内際のオペレーターの入力方法を統一できるし、自社でシステムを保有し補修する世界からクラウドサービスを利用する世界になっていく。今年決めようと思っている」と語り、22年にハードウエアの保守期限切れを控える国内線の旅客系基幹システムをクラウドサービスに更新する意向を示唆した。

一方で片野坂社長は、今後のDXはこうしたシステムの導入・刷新といったものにとどまらない幅広いものになる可能性を示す。「今年は中期経営計画の改訂版(ローリングプラン)の準備を進めているが、(数値目標の前提となる)為替や原油価格を調整するだけでは済まないとみている。銀行に行く人が減ったり若い人がお酒を飲まなくなったりするのと同様に、今後の航空事業は安泰だと言えるだろうか」と問題意識を示す。

■できそうにないものも真剣に取り組むと答えが出てくる

そのうえで片野坂社長は「2つのソウゾウ、すなわち想像と創造で、これまで当たり前だったものを変えていく。妄想も大事だ。できっこないと言われるものも真剣に取り組むと答えが出てくる。そうやって航空ビジネスそのものや関連事業をデジタルでどう変えていくか、考えないといけない」と語り、これまでより踏み込んだDXへの決意を表した。

具体例として片野坂社長は、国際線利用後の時差ボケ軽減アプリや機内での人間ドックサービスといった「乗ると元気になるヒコーキ」、ドローンによる機体点検や離島への物流、有人宇宙旅行や宇宙ゴミ除去ベンチャーへの出資、遠隔制御ロボットによる旅行体験や医療・教育などを実現するアバター事業への取り組み、次世代移動サービス「モビリティー・アズ・ア・サービス(MaaS)」担当部門の新設など、長期的な視野でさまざまな分野に取り組んでいることを紹介した。

■成功は失敗の積み重ねで生まれる

このように広範なDXの取り組みを続けていく背景には、挑戦に対して前向きなANAグループの企業風土があると語る片野坂社長。「実は私も失敗を繰り返してきた」と明かす。02年には1日に何便搭乗しても1万円という「乗り放題運賃」を企画したが、乗り継ぎ便に乗り遅れる乗客が続出して空港が大混乱したという。10年には国際線ビジネスクラスの機内食について、個々の乗客が自席のタッチパネルから好きなときに好きなものを注文できるサービスを始めたが、離陸直後に注文が殺到するなどしてサービス品質の低下を招き、1カ月ほどで中止に追い込まれた。

それでも片野坂社長は、失敗を恐れず挑戦を続ける姿勢が大事だと強調する。「当社の国際線自体も17年間赤字が続き、社内で撤退すべきだという声もあった。それでも5代の社長が撤退せず続けてきたおかげで、今では収益事業に育っている。機内食のオーダーシステムも、食材の廃棄ロス削減が社会問題になる今、再びチャレンジしても良いだろう。もちろん挑戦には苦労が伴うし、うまくいくとは限らない。それでも、成功は失敗の積み重ねで生まれるものだ」と力強く訴えかけた。

(日経 xTECH/日経コンピュータ 金子寛人)

[日経 xTECH 2019年7月10日掲載]

保存
共有
印刷
その他

日経BPの関連記事

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報

新しい日経電子版のお知らせ

より使いやすく、よりビジュアルに!日経電子版はデザインやページ構成を全面的に見直します。まず新たなトップページをご覧いただけます。

※もとの電子版にもすぐ戻れます。