イラン「核合意破壊するのは米国」 IAEA特別理事会

【ウィーン=木寺もも子】イランによる核合意義務履行の停止を受けて米国が要請した国際原子力機関(IAEA)特別理事会が10日、ウィーンで開かれ、イランは「核合意から離脱して破壊しようとしているのは米国だ」と主張した。米国はイランへの批判を展開し、議論は平行線。欧州も有効な対応策は示せず、核合意を救うための見通しは立たなかった。
会合は非公開で行われたが、イランは声明で「無法なふるまいで現在の状況を生み出した米国の要請でこの会合が開かれたのは残念な皮肉だ」と一方的に核合意から離脱した米国を批判した。
米国は「イランに核開発を進める(正当な)理由はまるでない」と主張するなど、言い分はかみ合わないまま。特別理事会としての共同声明などは出なかった。
会合の終了後、記者団の取材に応じたイランのアバディIAEA担当大使は、イランが核合意の義務のうち、IAEAによる査察受け入れなどを堅持していると強調した。ただ「今後受け入れを停止するような段階に至らないことを望む」と述べ、将来の変更の可能性を否定しなかった。
欧州などほかの合意当事国との協議に進展がなかった場合に追加で停止するとしている核合意の義務については「さまざまな選択肢を検討している」として、具体的な言及は避けた。イランはこれまでウラン濃縮度を20%まで引き上げるなどの可能性を示している。
外交筋によると、ほとんどの参加国はイランの合意義務停止に懸念を表明した。ロシアは声明で、イランによるこれまでの義務停止について「核不拡散のリスクを増すものではない」と理解を示した。中国も同調したもようだ。
欧州連合(EU)は「米国が核合意を離脱したことは非常に残念だ」とする一方、イランが核合意の義務履行の一部を停止し、ウランの貯蔵量や濃縮度が規定を超えたことに懸念を示した。米国の制裁を回避してイランと取引するためにつくった特別目的事業体(SPV)についても説明したが、SPVを通じてイランが原油輸出を再開できるめどは立っておらず、実効性のある対応は示されなかった。