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ドローン実用化、地方が先行 (Bizトレンド)

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

ドローン(小型無人機)の商業利用が進み始めた。これまでの業務利用は報道目的や観光などPR目的の空撮動画の撮影が主な用途だったが、農業や建設・土木の測量などで実用が始まっている。物流や災害対策などでも実用化に向けた実証実験が各地で進む。ドローン活用の主舞台は大都市ではなく、地方だ。

利用申請が急増

国土交通省に飛行の許可や承認を求めるドローンの利用申請が急速に増えている。国交省によると、ドローンの飛行のルールを定めた改正航空法の施行直後の16年1月の申請件数は812件だったが、18年12月の申請件数は2579件に増えた。3倍の規模だ。

従来の趣味や空撮以外に農林業やインフラ設備の点検、防災対応、土木工事の測量、山間部や離島での物流など、ドローンの使い道が広がりつつある。シンクタンクのインプレス総合研究所によると、国内のドローンを使ったサービスの市場規模は17年度に155億円。農薬散布を中心に農業分野が108億円、測量を中心とした土木・建築が23億円、空撮が15億円と、ドローンの実用化が徐々に広がっている。

同研究所は、24年度には3568億円に達すると予測している。

ドローンは無人ヘリコプターに比べて、狭い農地でのきめ細かい農薬散布などに適しているとされる。農林水産航空協会によると17年度の農薬散布用に同協会に登録されたドローンは729機で、前年度の約3倍に増えた。同協会から認定を受けた操縦者数も前年度の約3倍にあたる2954人となっている。

ドローンの利用は地方が舞台となるケースが多い。航空法は人口集中地区でのドローン飛行を規制しており、ドローンと「地方」は親和性が高い。そこでドローンを活用する地方自治体が増えている。政府は国家戦略特区制度でドローンの利用を促している。

ワンストップセンター制度を活用

特区を活用したドローンの関連の事例では「ワンストップセンター制度」がある。北九州市は18年11月、高度な産業技術である「自動車の自動運転」、「小型無人機」及び「電波利用」の3分野を対象に、円滑な実証実験の実施のために「北九州高度産業技術実証ワンストップサポートセンター」を設置した。

法規制のクリアに向けて関係省庁と調整し、飛行場所の地権者との調整や地域住民への周知なども1カ所で相談を受け付けるのがワンストップセンターだ。同市内で実証実験を行う企業や大学などを支援する。

千葉市は18年3月に「ちばドローン実証ワンストップセンター」を開設した。測量事業者から建物の劣化状況を分析する技術を検証したいとの要望を受け、同市内の中学校の体育館を紹介した。果実の受粉作業を手作業からドローンによる自動散布に代替する技術を研究している企業の要望を受け、市内の農政センターも実証実験場所として紹介した。

福島県南相馬市では楽天ローソンがドローンと移動販売者を使った配送実験を実施した。買い物客の自宅近くまで商品を運ぶ移動販売車を運用し、温度管理の都合で販売車両に乗せられない商品をドローンで販売車まで運ぶ。話を持ちかけたのは南相馬市だった。

楽天などが実施した日本郵便に続く国内2件目の「補助者無し目視外飛行」のドローン配送実験を誘致したのは、埼玉県秩父市だ。秩父市が実験に適した土地として、同市内にある浦山ダムの周辺を紹介した。

長野県伊那市は18年夏にKDDIゼンリンと組み、河川上空を幹線航路とするドローン物流システムの構築に向けて実証実験を始めた。天竜川などを幹線航路として、地元スーパー、道の駅などに物資を配送する物流網の構築を目指す。

「日本一ドローンが飛ぶ町」

徳島県那賀町は「日本一ドローンが飛ぶ町」を目指すと宣言し、自治体内にドローン推進室を設置している。土地の所有者の承諾をとったうえで、ドローンを飛ばすことが可能で空撮に適した地域を示した「ドローンマップ」を作成。ネットで公開している。

ドローン誘致に積極的な自治体に共通するのは「地域の問題解決にドローンを活用したい」(伊那市の担当者)という意識だ。こうした意識を後押しする国家戦略特区での事業認定や、法規制の整備や緩和など制度面も充実しつつある。今後も大都市に先行する形で、ドローンの実用化が地方で進みそうだ。

(リサーチエディター 伊東浩一)

[日経産業新聞 2019年6月28日付]

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