工場の革新 京都から、匠の技 ロボットで自動化

2019/7/11 6:02
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人手不足や技術者不足、製品の高度化――。ものづくりの現場では、品質を下げずに効率的に製品を生産しなければならない課題に直面する。こうした課題を解決しようと、京都の企業が様々な形で生産現場の進化に向けた取り組みを進めている。

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オムロンの綾部事業所(京都府綾部市)。生産棟の中でロボットが走り回る。進行方向に従業員の姿を見つけると、ぶつからないようにすっと停止した。同社が開発した「自動搬送モバイルロボット」だ。

生産ラインごとにカゴに入ったセンサーなどの完成品を受け取り、搬出口までせっせと運ぶ。従来の搬送ロボットは磁気テープなどであらかじめ決められたルートをたどるが、同社のロボットはレーザーを使って自ら地図を作り、最適なルートを考える。

オムロンは、ものづくりの現場を機械や人工知能(AI)を活用して自動化するファクトリーオートメーション(FA)に力を入れる。搬送ロボットに限らない。同事業所の300人いる技術者のうち、わずか6人しかできない特殊なはんだ付けを行うロボットも開発。「匠(たくみ)の技」を手際よくこなす。その様子を見ようと、顧客からの視察団が絶えない。

京都の企業は電子部品をはじめ、ものづくりの先端企業として得た様々な知見を製造現場の効率化に生かす取り組みを進める。

村田製作所は工場の生産設備の稼働データを秒単位で取得する技術を開発。グラフなどで可視化し、稼働率を高めるアドバイスをする生産効率化のソリューションとして2018年9月から外販を始めた。従来は担当者の記憶などを元に把握していた稼働状況を正確に分析。稼働率を下げる原因を洗い出し、生産能力の増強などにつなげる。

自動化機器大手の三菱ロジスネクストはレーザー誘導式の無人フォークリフトを開発した。走行ルート近くの壁面に反射板を設置、車両の位置を把握する仕組みで、状況に応じルートを変えられる。24年をメドに動画やセンサーなど次世代技術による高精度の無人フォークリフトを開発する。

効率化の取り組みを自社の生産ラインに組み込む動きも加速する。京セラは、ファインセラミック部品の生産ラインでロボットとAIを組み合わせた自動化の試験設備を設置。自動化の試行で人員を従来比5分の1まで削減した。電子部品や機械工具など他製品でも展開する。今夏から横浜みなとみらいにシステム開発拠点を集約し、AIの研究なども手がける。

仮想現実(VR)を使って、ロボットやドローンを活用できる生産性の高い工場を設計する取り組みを進めるのが日本電産だ。パソコン画面で工場のレイアウトを設計し、メガネ型VR端末を通じてロボットやドローンを使ったライン搬送を再現する。

同社の永守重信会長は「30年に世界の主な工場が完全自動になる。50年には500億台のロボットが働く時代が来る」と予言する。日本のハイテク産業をけん引してきた京都企業が、ものづくり現場の変革でも存在感を高めそうだ。

オムロンの山田義仁社長「人と機械 協調探る」

オムロンはファクトリーオートメーション(FA)を含む制御機器事業を成長の柱に据える。未来の製造現場をどう描いているのか。山田義仁社長に聞いた。

山田義仁 オムロン社長兼CEO

山田義仁 オムロン社長兼CEO

――オムロンが目指す製造現場の未来像は。

「今は工場内を自律走行できる『モバイルロボット』と呼ばれるロボットで、モノを運んでいる。この技術に生産ラインを組み合わせて、ラインそのものをフレキシブルに動かせるようにする。例えば売れ筋が読みにくい製品を作る際も、生産ライン自体を自在に動かすことで『今日はこれを作る』『明日はこれを作る』といった形で、常に最適なラインを構築できる」

「人を排除する自動化は志向していない。人と機械の協調を目指す。人間の創造性、臨機応変さ、工程のさらなる進化は人間にしかできない。ロボットはプログラムされたことはできるし、分析も人工知能(AI)を使えばできるが、製造ラインを革新していくのは人間の役割だ」

――最初に実現するのはどの分野でしょうか。

「電子部品メーカーが一番変化が激しくて技術革新に対して貪欲だ。意外と早く実現するかもしれない。京都に本社がある電子部品の村田製作所や京セラ、モーターの日本電産は自分たちで生産技術を進化させている。最先端の物づくり革新は京都企業から起こるかもしれない」

――近年、生産現場の自動化が加速しています。

「最も大きな変化は生産物の高度化だ。かつてスマートフォンは人の手で組み立てていたが、部品の高度化、高密度化が進み、今はオートメーションでしか対応できない。さらに、世界同時立ち上げで例えばスマホの発売日に何千万台を用意しないといけない。深刻なのは生産技術者の不足。技術を持つ人が定年退職でいなくなる。機械なら技術者のノウハウをAIに移すこともできる」

――製造業の課題は。

「熟練工がいなくても高品質なモノをつくれるようにしなければいけない。現在、FAメーカーは米中貿易摩擦などで設備投資が減っており短期的には逆風が吹いている。しかし根底にある生産物の高度化、技術者不足などの課題は不変で、FAメーカーが活躍しないといけない」

――オムロンはなぜFAに力を入れるのでしょう。

「創業者の立石一真が発明したレントゲン用のタイマーが創業のきっかけだ。タイマーはFA部品の一つで、そういう意味でFAが第一歩だった。戦後、工場自動化を1960年代にかけて産業に発展させた」

――今後、FA事業をどう伸ばしますか。

「もともと制御機器メーカーだったが、M&A(合併・買収)でFAとロボットを両方持つようになった。ロボットと制御機器を同じコントローラーで制御できるほぼ唯一のメーカーだ。ロボットメーカーはロボットの品ぞろえはいいが、制御技術は不足している。必ずしもM&Aにこだわっておらず、業務提携もありうる。オムロンにない技術を我々の技術と組み合わせて新しい価値をつくり出せるM&Aをしたい」

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