米・イラン、相互不信に拍車 ペンス氏「軍事行動」言及

イラン緊迫
2019/7/9 18:56
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【ワシントン=中村亮】トランプ米政権が2020年の大統領選に向けて、イランの核開発に警戒を強めている。イランと敵対するイスラエルの安全が脅かされ、政権の支持基盤であるキリスト教保守派が反発する公算が大きいからだ。フランスは対話再開を模索するが、米とイランの相互不信は深刻で、緊張緩和の道は見えていない。

8日、演説するペンス米副大統領=AP

「イランの核武装は絶対に認めない」。ペンス副大統領は8日、キリスト教保守派のイベントで力説した。米とイスラエルの安全保障協力は「史上最強だ」として「米軍は準備を整えている」とイランへの軍事攻撃も辞さない姿勢を示した。ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)もイランの核開発断念まで圧力を強めると断言した。

トランプ政権はオバマ前政権が結んだ核合意を不十分だと断じ、18年5月に離脱を表明した。経済制裁を再開してイランの核開発能力を完全に除去することを狙った。だがイランはウランの濃縮度の引き上げや低濃縮ウランの貯蔵量を増やすなど、核合意からの逸脱行為を繰り返す。

イランの核兵器保有はトランプ氏の支持基盤を揺るがしかねない。保守的なキリスト教福音派はキリストの再臨前にユダヤ人国家(イスラエル)が維持されるべきだと信じる。イスラエルの存亡に関わるイランの核保有に福音派が反発すれば、批判の矛先は核合意の離脱を決めたトランプ氏に向かうリスクがある。20年に大統領再選を目指すトランプ氏が最も避けたいシナリオの一つだ。

オバマ政権下でイラン政策を担ったジャレット・ブラン氏はイランの核合意違反を踏まえて「米国は欧州に反イラン政策での同調を迫る」とみる。イランを擁護してきた欧州が同国への批判を強めつつあるからだ。米国が要請した国際原子力機関(IAEA)の特別理事会は10日に開催される予定で、米はイランの核開発リスクを強調して連携を訴えるとみられる。

イランが核合意を事実上破棄したと欧州が判断すれば、核合意を理由に停止したイラン制裁を欧州が復活させるシナリオが現実味を帯びる。ボルトン氏は8日、英領ジブラルタルの自治政府がシリアに向かっていたイランの大型石油タンカーを拿捕(だほ)したことに触れて「制裁履行で同盟国と協力をさらに深める」と強調した。

一方、イランのバゲリ参謀総長は9日「虚偽の理由による拿捕が放置されることはない」と述べ、適切な時期に対抗措置をとる考えを示した。イランのザリフ外相は9日のツイッターで「ボルトン氏と(イスラエルの)ネタニヤフ首相がトランプ氏をたきつけて核合意を壊そうとしている」と強調した。

イランが強硬姿勢を続ければ、トランプ氏が6月に土壇場で中止したイランへの軍事行動が再び浮上する可能性もある。焦点はイランの核関連活動に対し「レッドライン(越えてはいけない一線)」をどこに引くかだ。

イランは9月上旬にもウランの濃縮度を20%に引き上げる可能性があると説明する。核爆弾の製造に一段と近づき、米政権が猛反発するのは必至だ。イランが核合意で受け入れたIAEAの査察を拒否した場合にも、米国の軍事行動の理由になるとの見方がある。

米戦略国際問題研究所(CSIS)のジョン・アルターマン上級副所長は「イランは米国の猛反撃を招かない程度の挑発行動を続ける」と指摘する。中東のホルムズ海峡を航行するタンカーや上空を飛行する無人偵察機に再び攻撃する可能性もある。米兵に死傷者が出ればトランプ氏が軍事攻撃を実施せざるを得ないとの見方は根強い。

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