2019年8月23日(金)

香港デモ1カ月、出口見えぬ対立 行政長官は撤回拒む

2019/7/9 19:30
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【香港=木原雄士】中国本土への容疑者移送を可能とする「逃亡犯条例」改正案をめぐる香港の100万人規模のデモから9日で1カ月たった。林鄭月娥行政長官は同日「条例案は死んだ」と述べたが、民主派団体は「完全撤回の要求に応えておらず、行政長官の発言は信用できない」と猛反発した。双方の対立が深まり、解決の糸口が見つかっていない。

香港のデモは収束の兆しが見えない(7日、繁華街を行進する参加者)

林鄭氏は9日、中国語で天寿をまっとうすることを意味する「寿終正寝」、英語で死を意味する「dead」という言葉を使い「条例改正作業は完全に失敗だった」と非を認めた。ただ若者らが求める「撤回」は明言しなかった。条例改正を支持してきた中国政府に配慮したとの見方がもっぱらだ。

一連のデモを受け、林鄭氏は発言を次々と修正してきた。6月9日の103万人デモの後は「法律の抜け穴をふさぐ必要があり、条例改正は重要だ」と撤回要求を拒否。多数のけが人が出たデモ隊と警察の衝突を受けて「期限を定めず延期する」と表明したが、条例改正自体は正しいとの立場をにじませた。

6月16日の200万人デモを受けて「改正手続きを再開しない」と踏み込み、2020年7月に自動的に廃案になる事実を受け入れるとした。

今回の発言に対しては、条例改正を懸念していた経済界にはひとまず安堵感が広がっている。ただ民主派や学生らは林鄭氏への不信感を募らせている。立法会(議会)の破壊・占拠など一部の過激な抗議活動にも「政府が若者らを追い込んでいる」(7日のデモ参加者)と理解を示す人は一定数いる。

市民をデモに突き動かすのは、香港に高度な自治を認めた「一国二制度」が崩壊しかねないとの危機感だ。一連の経緯で、親中派の林鄭氏は市民の懸念に正面から向き合わず、常に中国のメンツを重視していると受け止められた。若者らは行政長官を親中派からしか選べない仕組みに問題があり、有権者が1人1票を投じる選挙制度への見直しが必要だと訴え始めた。

もっとも、行政長官選挙の民主化は2014年の「雨傘運動」で学生らが要求したが、中国政府が断固として認めなかった経緯がある。当時の学生リーダーの一人、黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏は9日、ツイッターに「すべての統治危機は政治的な不平等から起きている。私たちの要求は自由選挙だ」と改めて訴えた。

民主派は11月の区議会選挙(地方議会選挙)に照準を合わせ始めた。前回15年の選挙は雨傘運動の直後で、民主派の多くの新顔が当選した。香港政府は16年以降、立法会で独立を志向する民主派議員の資格を剥奪し、立候補も認めないなど政治的な締め付けを強めてきた。区議会選で資格取り消しを連発すれば、市民の反発が一段と強まる恐れがある。

条例改正で始まった大規模デモは民主化を含む幅広い要求に変わりつつあり、市民と政府との対立は続きそうだ。中国政府は欧米の批判に猛反発するなど、神経をとがらせている。

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