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期待の星、取り戻した推進力 競泳・長谷川涼香(上)

久しぶりに、水面をはねる体が軽かった。

4月の競泳日本選手権、女子200メートルバタフライ決勝。長谷川涼香(東京ドーム)は序盤から勢いに乗った。前半はライバルに先行させるのがこれまでのパターンだったが、この日は「人生で一番スピードが出ていた」。100メートルで首位に立つと、最後まで先頭を譲らず派遣標準記録を突破する2分7秒44で優勝。2年ぶりに自力での代表入りを決めた。

4月の日本選手権では「最後まで周りを気にせず、自分の泳ぎができた」と語る

「最後まで周りを気にせず、自分の泳ぎができた」。そううなずく姿は、2位に終わり、泣きじゃくってプールを後にした1年前とは対照的だった。

復活を後押ししたのはこの1年間、強化してきたキック。ラスト50メートルも意識して足を打つことで、上体は浮き上がり、最後まで前への推進力を生んだ。

これまでは、肩周りの恵まれた筋肉を生かした、力強いストロークを武器としてきた。それが今季はキックの改善で、コーチを務める父・滋によれば「腕に乳酸のたまるレース終盤でも、肘を立てて水を押すことができる」ようになった。

男性さながらのパワフルな泳ぎで2016年、16歳で初代表入りし、リオデジャネイロ五輪に出場した。くしくも同年、五輪2大会銅メダルの星奈津美さんが引退。「星の後継者」として長谷川に期待の目が向けられるのは自然な流れだった。

だが、その後は思い描いた成長曲線に乗れず、17年世界選手権は6位。さらに昨季は大ブレーキ。自己ベスト(2分6秒00)より2秒以上遅い2分8秒台で伸び悩み、レースのたびに「体が重い」と繰り返した。

ちょうど少女から大人へと変わる端境期。筋肉量の増加など体の変化に対応できず、「動きがロボットのように硬くなっていた」と滋は分析する。再びイルカのような体のくねりを取り戻すために取り入れたのがウエーブ練習だった。シュノーケルを付けて胸や背骨の使い方を意識しながらドルフィンキックを繰り返した。体が柔らかくほぐれると、これまであまり使えていなかった脚を力みなく動かせるようになった。

長谷川には今、取り戻したい感覚がある。「2年前までは150メートルまでに前の選手に追いついて、そのまま『さよなら~』するのが楽しかった。今はどうしてもラスト50メートルで『ああきつい』となっちゃって」

その兆しは少しずつ見えてきた。「日本選手権で、こんな感じだったんだなという泳ぎがちょっとよみがえった」。21日に開幕する競泳の世界選手権。殻を破る瞬間が近づいている。=敬称略

(堀部遥)

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