2019年8月18日(日)

米雇用22万人増に回復 6月、利下げ議論大詰め

トランプ政権
2019/7/5 21:40
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【ワシントン=河浪武史】米労働省が5日発表した6月の雇用統計(速報値、季節調整済み)は、景気動向を敏感に反映する非農業部門の就業者数が前月比22万4千人増えた。増加幅は前月(7万2千人)から回復し、市場予測(16万人程度)も上回った。雇用情勢は底堅さを保っているが、貿易戦争による景気下振れ懸念は根強く、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ議論も大詰めだ。

失業率は3.7%と、49年ぶりの水準だった前月から0.1ポイント悪化した。直近3カ月の就業者数の伸びは月平均で約17万人となり、米労働市場は完全雇用に近い水準にありながら底堅い拡大が続いている。運輸・倉庫業の就業者が2万人強増えたほか、ヘルスケア産業も5万人増えて全体をけん引した。

平均時給は27.90ドルと前年同月比3.1%増え、11カ月連続で3%台の伸びを保っている。ただ、08年の金融危機前後でも3%台半ばの伸び率を記録しており、米経済には失業率の低下が力強い賃上げにつながらないもどかしさがある。

FRBは雇用や企業投資などの指標を見極めながら、早期の利下げの可否を判断する。6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では金融政策の現状維持を決めたが、パウエル議長は記者会見で「世界景気の力強さに懸念があり、金融緩和の必然性が高まっていると考えている」と明言。利上げサイクルを完全停止し、近く利下げに転じる可能性を示唆した。

投資家の利下げ期待は強まっており、先物市場は7月30~31日の次回会合で利下げを決断する可能性を100%と予測する。20年の再選を最優先するトランプ米大統領も、景気減速を避けるため「利下げを実行する必要がある」と露骨に圧力をかける。FRBは既に市場と政権の二重の圧力にさらされている。

米国と中国の貿易戦争が丸1年と長期化し、米経済指標からも景気減速の兆しが読み取れる。6月の製造業の景況感指数は2年8カ月ぶりの低水準となり、非製造業も1年11カ月ぶりの低さとなった。1~6月の米企業・政府機関の人員削減計画は約33万人と前年同期比35%増えて、金融危機直後だった09年以来10年ぶりの多さとなった。

物価もさえない。5月の個人消費支出(PCE)物価指数は上昇率が前年同月比1.5%にとどまり、目標の2%を7カ月連続で下回っている。投資家らが先行きの物価をどのようにみているかを示す「期待インフレ率」は直近で1.6%台まで下がり、FRBが利下げを決断する条件はそろいつつある。

もっとも、FRB内が7月末の利下げで完全に一致しているわけではない。6月の会合でFOMCメンバー17人が示した19年中の政策金利見通しは、8人が年内の利下げを主張したものの、8人は現状維持を予測し、1人は利上げを予想した。6月の雇用統計の底堅さは、金融緩和に慎重な「タカ派」メンバーに勢いを与えそうで、FOMC内の意見集約が遅れる可能性もある。

パウエル議長は10日、米下院で議会証言に臨む。FRBが利下げに転じれば、金融危機の直後だった08年12月以来だ。ドル相場などを通じて世界市場を再び揺るがすことになり、日銀や欧州中央銀行(ECB)も金融緩和の拡大を余儀なくされる可能性がある。米景気は拡大局面が11年目に突入し、記録がある1850年代以来で最長となったが、金融政策はいち早く大きな転換点に突入しつつある。

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