予備校、集団から個別へ 駿台がリソーに出資

予備校大手が個別指導に注力している。駿河台学園(駿台、東京・千代田)は個別指導塾大手、リソー教育と資本業務提携を結んだ。少子化が進む中、優秀な講師を集めて集団授業を提供するビジネスモデルが崩れ始めた予備校。生徒それぞれにきめ細やかな指導を提供する、従来モデルとは真逆のアプローチで苦境を乗り越えようとしている。
駿台は8日付で、個別指導塾「TOMAS」を運営するリソー教育の株式を創業者の岩佐実次会長から、議決権ベースで約7%取得する。岩佐氏は駿台が株式を取得するまではリソー教育の30%弱の株式を保有する筆頭株主。2014年に発覚した不適切会計の責任を取り、15年に会長兼社長を辞任後、相談役を経て今年5月に会長に返り咲いていた。
駿台による出資の一番の狙いは個別指導事業の強化だ。提携を機に個別指導塾ブランド「駿台TOMAS(仮称)」を立ち上げる。両社の共同出資会社を9月1日付で設立する。
自前でも個別指導コースを小学生~高校・既卒生向けに提供してきた駿台。ただ個別指導のノウハウを豊富に持つわけではなく、生徒数は伸び悩んでいた。
駿台は東京大や京都大、医学部など難関校の受験指導に強みを持つ。駿台のノウハウとリソー教育の個別指導塾の運営ノウハウを掛け合わせ、駿台TOMASでは超難関校の受験に特化した個別指導を提供する。
まずは中学受験向け、20年度以降は高校・大学受験の塾も展開していく。リソー教育グループの塾に駿台の教材を導入し、販路を拡大する狙いもありそうだ。
人気講師を集め、競争意識を高める集団授業を強みとしていた大手予備校は、少子化を背景に苦戦を強いられている。15年には代々木ゼミナールが校舎の大量閉鎖に追い込まれた。
一方で、高単価だが指導が手厚い個別指導塾の人気が高まっている。共働き世帯の増加で家計に余裕が生まれた面もある。市場全体に占める個別塾のシェアは45%程度と、10年間で5ポイントほど高まったもようだ。
予備校大手が培ってきた難関校向けの指導ノウハウそのものは評価が高い。生徒それぞれにきめ細やかな指導を提供できる仕組みを整え、新たな形で強みを提供し、苦境を乗り越えようと、各校は個別指導へのシフトを進めている。
駿台は18年に通信教育大手のZ会(静岡県三島市)と業務提携。駿台の授業とZ会が強みとする添削指導を組み合わせた講座を4月に設け、生徒それぞれに合わせた指導を始めた。
駿台・代ゼミと並ぶ3大予備校の河合塾(名古屋市)は人工知能(AI)開発のコンパス(同・品川)と業務提携。AIが分析した学生の理解度に応じ、学ぶ内容を変えたり、問題の難易度を調整したりする教材を開発する。
質の高い個別指導の実現には優秀な人材の確保や指導ノウハウの確立、学習の個別化を促す技術の開発などが不可欠だ。今後「個別指導」をキーワードに他社のノウハウを求め合う合従連衡が一段と進みそうだ。
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