2019年9月22日(日)

北海道の夏イチゴ ケーキ用に首都圏へ空輸
(北海道 食の王国)

2019/7/5 17:24
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洋菓子の定番、イチゴショートケーキの頂点で赤く輝くイチゴはほどよい酸味を放ち、生クリームの甘さを引き立てる。夏イチゴ生産量日本一を誇る北海道日高の浦河、様似の両町では7月半ばに出荷ピークを迎える。価格は外国産の約3倍と値は張るが品質は折り紙つきで、ほぼ全量が東京方面に空輸されていく。

夏イチゴは7月半ばに収穫のピークを迎える

夏イチゴを年間20トン出荷する地場最大の菅農園ではこの時期、日の出からせわしなく収穫作業が続く。最大の顧客は、首都圏を中心に洋菓子店を400店舗展開している銀座コージーコーナー(東京・中央)。2町で生産する夏イチゴ200トンのうち、約70トンが同社向けに出荷される。

あかね色のイチゴを鈴のように実らせ、「すずあかね」と命名された日高の夏イチゴ。ただ浦河町で夏イチゴの栽培が始まったのは2003年と歴史は比較的浅い。

地元の基幹産業である競走馬の生産はバブル経済の崩壊で販売価格が落ち込んだまま。特産品を多角化しようとした浦河町とひだか東農業協同組合は当時、国産の夏イチゴがほとんど出回らず、洋菓子メーカーが米国からの輸入に頼っていることに目をつけた。

夏も涼しく日照時間が長いことを生かし、当初は菅農園を含む農家4戸で栽培を始めた。ところが肥料を与えすぎてしまったり、実がうまくならなかったりと苦戦続き。「地元を日本一のイチゴ産地にする」と意気込んでいた谷川弘一郎・浦河町長(当時)は、農業試験場や農薬メーカーで40年間にわたってイチゴを研究してきた今野寛氏を町の臨時職員として招いて指導を仰いだ。

当初は反発する農家も多かったというが、今野氏は栽培方法を親身に教え、農家も次第に心を開くようになった。今野氏は地元に合う品種も探し出した。試験栽培を繰り返し、自らも開発に携わっていた品種「HS351」が日高には適していることがわかった。農家も増産に励み、10年にすずあかねの販売額で全国トップに輝いた。

右肩上がりで伸びてきた夏イチゴ栽培はいま、新規就農者に支えられている。イチゴ農家42戸の8割以上が新規就農者だ。町もイチゴ栽培が若者の受け入れにもつながるとして、3000万円かかる初期投資のうち、半額を補助している。残りの半額も5年リースにすることで、手持ち資金がほとんどない新参者でも2年間の研修を経て独立することができる。

とはいえ、人手不足は夏イチゴの生産現場にも忍び寄る。農協がもつ選果場の処理能力がもたず、20年1月に研修生が独立するのを期に新規就農者の受け入れは当面見合わせる。選別の人手を確保できなければ追加投資も難しい。様似町にある選果場では画像解析技術を導入するなど、経験がほとんどない人でも熟練者のように選別できないか検討を進めている。

夏イチゴのほとんどがケーキ用として流通しており、知名度が高まらないのも大きな課題だ。多くの人に日高の夏イチゴを知ってもらおうと、菅農園は飲食業と組んで5日、地元産のイチゴを発信するスイーツ専門店「ベリー・ベリー・クレイジー」を札幌の繁華街・すすきの地区に出店した。イチゴのおいしさを地道に伝えていく試みは始まったばかりだ。

■イチゴ消費減少傾向

2018年に韓国で開催された平昌冬季五輪では、女子カーリングの日本代表チームが試合のハーフタイムに栄養補給としてイチゴをほお張っていた様子が「もぐもぐタイム」としてお茶の間の注目を集めた。とはいえ果物離れはイチゴも例外ではない。

総務省の家計調査をみると、イチゴの消費量の減少傾向に歯止めがかからず、ここ数年の年間消費量はピークだった1986年の4806グラムの半分程度で推移している。一方、100グラムあたりの単価は86年の1.5倍に増えた。消費量が低迷する一方でブランドいちごが続々と登場しており、産地間競争は激しくなっている。

(山中博文)

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