2社からラブコール、ココカラファインの物流改革

コラム(ビジネス)
2019/7/9 4:30
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日経ビジネス電子版

ドラッグストア業界で注目の争奪戦が進んでいる。業界5位のマツモトキヨシホールディングス(HD)が2019年4月26日、7位のココカラファインと資本業務提携に関する協議を始めることで合意した。すると6位のスギHDがその翌日、ココカラに経営統合を正式に打診。結局、ココカラは6月1日にスギHDとも経営統合に向けた協議を開始すると決め、「どちらとの統合が企業価値を高めるか」を評価する外部有識者による特別委員会を立ち上げ、7月末めどの答申を待っている状態だ。

ココカラファインは都市部に店舗が多く、化粧品と調剤に強みがある

ココカラファインは都市部に店舗が多く、化粧品と調剤に強みがある

そのモテモテ状態のココカラは、物流改革を進めている。キーワードは「ハイブリッド」だ。

ドラッグストア業界では近年、中小規模のチェーンを大手が高値で買収する構図が続いてきた。だが、トップ10に入る大手同士の統合は起きていない。医薬品販売の粗利を原資に、食品を安売りするなどしてスーパーやコンビニの顧客を奪い、業界自体が成長してきたからだ。

各社が店舗を増やす中、物流に関しては戦略が分かれている。業界3位のコスモス薬品は自社で物流センターを抱え、1位のツルハHDは卸に委託している。今回、争奪戦の対象となっているココカラは独自の物流戦略に乗り出している。

ココカラは全国で1300以上のドラッグストアを運営する。その店舗に日々補充される商品は、トランスファーセンター(TC、通過型センター)と呼ばれる拠点で仕分けされ、各店舗に配送される。ココカラのTCは現在、千葉、埼玉、広島、愛知、大阪など全部で9カ所。メーカーや卸から朝届く段ボールやケースを開梱(かいこん)し、仕分けして、夜、店舗に送り出すのがTCの機能だ。

ココカラはこうした業務をこれまで、外部の3PL(サード・パーティー・ロジスティクス)業者に委託していたが、19年8月から埼玉県所沢市のTCについては自社で運営を始める予定だ。具体的には現在作業を担当する従業員を自社雇用に切り替え、TC機能を「持つ」ようにするという。

「TCの作業を自社でやっていれば、外部環境の変化に合わせてコストコントロールが柔軟にできる」。尾池泰之上席執行役員は、切り替える理由をこう説明する。例えば、TCの人手が足りず、時給の引き上げなどでコストがかかってしまう場合。3PLに委託していれば、こうした外部環境を理由に値上げを要請され、のまざるを得ない可能性がある。

■25年までにすべて「自立化」

一方でTCを自社で運営すれば、店での作業を増やして、TCの作業を減らす、あるいはその逆といった柔軟な対応ができる。「TCを別の事業者に任せていると、物流効率と店舗効率のコンフリクトが起こることがある。全体最適のためには自分たちで持たなければいけない」と尾池氏は話す。

ココカラは店舗向けに商品を仕分け・発送するTCの運営機能を自社に取り込む

ココカラは店舗向けに商品を仕分け・発送するTCの運営機能を自社に取り込む

ココカラは25年ごろまでに、ほぼすべてのTCを自社運営に切り替える方針だ。同社の特徴は、人員やベルトコンベヤーなどの物流設備は自社で抱える一方で、土地や建物は賃貸物件を使う。「どこに店を出すかは市場動向に応じて変わる。それによってTCとして効率のいい場所も変わるので、不動産を持つのは得策ではない」(尾池氏)との考えからだ。店舗戦略の柔軟性を保ちながら、コストコントロールができる「ハイブリッド」な形態を構築しようとしている。

ココカラが物流を自社で持とうと決めたのは15年ごろ。統合合戦の渦中にある同社は、物流ハイブリッド化に向けた「10年の計」を進めてきた。

そのココカラにラブコールを送る大手2社は、それぞれ自社との統合が企業価値を高めると主張する。「共通の理念を持ち、都市部に多くの店舗があるという共通の特徴がある」(マツキヨHD)、「目指す戦略が一致し、店舗網が大きく競合しない」(スギHD)。これに対しココカラは、元イトーヨーカ堂社長の亀井淳氏を委員長とする特別委員会を立ち上げ、マツキヨHDとスギHDの2社の提案を比べて評価してもらうという手段を取った。7月末の答申を受け、取締役会でどちらと統合の協議に入るのかを決める。

(日経ビジネス 庄司容子)

[日経ビジネス電子版 2019年7月8日の記事を再構成]

 日経ビジネス7月8日号の特集 「再考 持たざる経営」では、店舗や人、物流などで企業が何を「持つか」「持たないか」の戦略が業種や企業によって分かれてきたことをレポートした。

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