2019年7月20日(土)

マイク・リー監督、民主主義の原点問う史劇

文化往来
2019/7/11 6:00
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「秘密と嘘」のマイク・リー監督が本格的な史劇を撮った。選挙権を求める英マンチェスターの労働者たちの集会に騎兵隊が突入し、多数の死傷者を出した1819年の事件を描く「ピータールー」(8月9日公開)だ。英国史の恥部といえる虐殺事件を子細に描き出すことによって、民主主義の原点を問う作品である。

ピータールーの虐殺を描くマイク・リー監督「ピータールー」
(C) Amazon Content Services LLC, Film4 a division of Channel Four Television Corporation and The British Film Institute 2018.

ピータールーの虐殺を描くマイク・リー監督「ピータールー」
(C) Amazon Content Services LLC, Film4 a division of Channel Four Television Corporation and The British Film Institute 2018.

「この有名な事件はずっと映画化されなかったが、今こそ映画化されるべきだと思った。今、民主主義が問われているからだ」とリーは強調する。「2014年に映画化を構想したが、その後の5年間で世界はますます狂乱し、ますますこの事件に関連づいてきた。英国の欧州連合(EU)脱退、トランプの登場、世界各地の極右の台頭、香港の民衆抑圧。世界は正気を失っている」

リベラル側も体制側も、労働者も貴族も、活動家も密告者も、治安判事も義勇兵も、男も女も、一人ひとりの人物を丁寧に描いている。

「この物語は色々な人についての色々な事件が一つになって、全体の大きな事件になっている。語るとしたら、それが自然な形になる」。細部にこだわり、一人ひとりの人物をリアルに立体的に描くのはリーの一貫したスタイルでもある。「その通り。細部がなければ、この映画は空虚で意味のないものになったと思う」

史劇を作るに際し、わかりやすい現代化は避けた。「衣装や言語は当時のままに再現した。当時のままであればあるほど今の我々にも理解できる。それは日本映画の時代劇から学んだ」

労働者階級の母親が幼子を前に1900年の世界を悲観するセリフがある。「初孫が生まれる1週間前の撮影で、この子が大人になったころどんな時代になるだろうと懸念し、あのセリフを入れた。生まれた初孫の姿を眺めながら、今は楽観と悲観の間で揺れている」と語った。

(古賀重樹)

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