試乗車レジャーで体感、トヨタ系販売店 貸し出し倍増
トヨタ自動車の直営販売店、トヨタモビリティ東京(TMT、東京都港区)は販売店網を生かした試乗車の貸し出しを拡大する。利用する試乗車を2019年中には現在の倍の1000台に増やす。大型の試乗車を借りてキャンプに行ってもらうなど、体感をテコに乗り換え需要を開拓する。販売店はカーシェアリングを含め新車販売に限らず車を利活用する動きを広げる計画で、中部にも波及しそうだ。

トヨタモビリティ東京は東京都内にある直営販売会社4社が統合し、4月に設立した。現在、78店舗で約500台を貸し出しているが、7月中に全175店舗に配備を完了し、19年中には1000台まで増やす。
試乗車にレンタカー扱いとなる「わ」ナンバーを付けて顧客に貸し出す取り組みは、18年4月から旧ネッツトヨタ東京の4店舗で始まった。
販売店で新車を購入し、整備などアフターサービスも受けている既存顧客に貸し出す。自動ブレーキといった安全装置など、最新装備がついた新車に乗ってもらい、買い替え需要の底上げも狙う。
普段は小型車を保有しているが、来客で乗車人数が増えたり、キャンプなどレジャーで利用シーンが変わる場合に、貸し出しを申し込む顧客が多い。19年5月の10連休にも、店舗は休みだったが「試乗車を寝かしておいてはもったいない」として10日間連続で貸し出したという。

片山守社長は「顧客からの引き合いは強い。接点を持つ販売店の強みを生かした車の利活用方法がある」と述べ、今後取扱店舗や台数を増やしていく。既存顧客に限った貸し出しであれば走行距離を短く抑えることもでき、将来的に試乗車を気に入った顧客に中古車として販売することも視野に入れる。
TMTの前身となった4社は1月、全国のトヨタ系販売店に先駆けて24時間貸し出し・返却ができるカーシェアリングサービスを始めていた。現在は都心部の23区内を中心に22店舗で32台を貸し出している。実験的な取り組みで「若者の場合はミニバンの利用率が多い」など傾向を調べている。
ただ販売店でシェアリングサービスを導入する場合、24時間出入りできるかや防犯上問題ないかなど、構造上対応できる店が限られているという。「システムが構築でき、安全面など条件の整った店舗で実施していければ」(片山社長)としている。
トヨタは現状のままでは25年ごろに全国の販売会社のうち、2割が赤字に転落すると試算する。そのため、今夏以降、販売店でのシェアリングサービスを全国に広げるなど、消費者が車を「所有」することを前提とした既存の新車販売中心のビジネスモデルからの脱却を急いでいる。車の「利用」を通じ顧客との接点を増やす取り組みが今後さらに重要になりそうだ。
全車種併売、受注額15%押し上げ
4系列に分かれていた東京の直営販売会社を4月に統合し、全国のトヨタ自動車系販売店に先駆けて全車種併売に乗り出したトヨタモビリティ東京。片山守社長に新施策、サービスの手応えを聞いた。

――全国で2020年5月に導入される全車種併売を、先駆けて始めました。
「店舗での受注額は併売効果があり4、5月はいい数字が出た。前年にモデルチェンジがあったクラウンの反動減の影響を除くと前年比15%増と、単純には比較できないが全国の1割増より伸び率は大きかった」
「大型セダンからミニバンに人気がシフトしていることもあり、5月に旧東京トヨタ自動車が最も売った車は、トヨペット系列専売車のアルファードだった。人気車種の傾向が見えてきている」
――今月全国展開が始まった月定額で新車に乗れる「KINTO」も2月から提供しています。
「実験的な取り組みでまだ細かく話せる段階ではない。ただ、7~8年という車の平均乗り換え期間を短くする施策の1つと理解している。自動ブレーキといった安全装置がついた車両を新車だけでなく中古車市場に行き渡らせることにもつながり、誰が乗っても安心安全な車が国内に広がるとみている」
(広沢まゆみ)
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