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難波騎手、100勝達成 多くの「絆」が後押し

現在、障害戦を中心に活躍中の難波剛健騎手(36)が5月18日、新潟1レースのオールマンリバーで中央競馬通算100勝を達成しました。2001年デビューの難波騎手にとっては19年目での達成です。決して早くはないこの記録達成を迎えたこれまで、そしてこれからについて難波騎手に伺いました。そこで見えてきたものは「様々な絆」でした。

――記録達成おめでとうございます。

「素直にうれしかったです。ただ着差が着差(頭差)だっただけに、ゴール前はかなり力が入りました。その前の99勝(4月27日新潟・マイブルーヘブン)を勝った時から、いいリズムで乗れているなという感じがありましたので、その流れでくることができたということもあります。今年は僕としてはこの時期で障害4勝とそこそこいいですし、プラス平地も(5年ぶりに)勝って、障害の騎乗数もいいペースで乗れているので、本当にありがたいと思っています」

――デビュー時は好スタートでしたね。

「当時は3キロの減量もありましたし、師匠の高橋成忠先生がバックアップしてくださいましたからね。本当は(その当時)もっと、がむしゃらに貪欲に結果を残しておかなくてはならなかったのですが、今思えば僕自身、(高橋成)先生に甘えていました。若いころというのは、それがなかなか分からなかったんですね」

――3年目には前年の20勝から11勝と勝ち星が減りました。

「減量が3キロから2キロ、1キロと減るに従って、乗る数も勝利数も減っていきました。危機感は感じてはいたものの結局、所属厩舎があることに甘えていたのだと思います。当時は自分なりに頑張っていたつもりでしたが全然でしたね。もっと頑張っていなくてはいけませんでした」

高橋成先生がつないでくれた騎手人生

――危機感に真剣に向き合い出したのは?

「いよいよ高橋成先生の定年が近づいてきたときです。乗っているのも高橋成厩舎の馬ばかり。1年に1勝するかしないかという感じが何年か続いていたので、そのときですね。そこで(これまでも乗っていた)障害レースに本腰をいれていこうと思っていたときに吉岡(八郎)先生=引退=のメイショウチョイス(09年6月20日阪神・障害未勝利)という馬で勝てたことがきっかけで、自分は障害で生きていくと心に決めました」

――苦しい時期が長く続きながらも、騎手として生きるモチベーションとなったものは?

「それは師匠である高橋成先生が僕の知らないところで馬主さんに頭を下げていただいてつないでくれた乗り役人生を、ちょっと成績が出ないからと投げ出すことはできないという気持ちでした」

――高橋成先生との絆は本当に深いですね。

「本当にかわいがっていただきました。デビューしてから(高橋成調教師引退までの)10年お世話になりましたが、たくさん乗せていただき、勝たせていただきました。あまり表には出さない方でしたが、背中から伝わる人情味や温かさは感じていました。だからこそ、(高橋成)先生につないでいただいた騎手人生、どこかで花を咲かせたいと思っています」

――12年ごろから障害の成績が安定してきました。

「もちろんまだまだ続くことではありますが、多くの馬の調教に携わったり、レースを経験して自分の型ができ上がってきたというか、それ以前のようにただがむしゃらに障害レースに乗ったり障害馬の育成をしたりしていたときとは違い、障害の先輩騎手の教えを聞くなど試行錯誤を重ねてより自分の考えを持っていけるようになったことが大きいですね」

――障害騎手の皆さんの団結力はすごいですね。

「危険の多い障害レースを共に戦っているという仲間意識というのは本当に強いと思います」

――また、競馬学校の同級生が多く障害に乗っていますね。

「そうですね。10人デビューして3人が引退しましたが、残る7人中6人が障害に乗っています(自身のほか石神深一騎手、大庭和弥騎手、小坂忠士騎手、平沢健治騎手、蓑島靖典騎手)。近年では珍しいケースだと思います。この同期の絆も強いですよ、みんなあきらめが悪いんです(笑)。それは冗談ですがみんな競馬が大好きで馬に乗るのが好きなんですね」

「それと遠征に行ったら障害騎手が集まるので、調整ルームでの食事も自然と同期が集まることが多いですね。何年か前、中山大障害でこの6人が同時に乗るチャンスがあったのですが、たまたま直前になって平沢君のマキオボーラーが取り消しになって(16年)同期5人になりました。5人でもすごいことだと今でも思っています」

――話は戻りますが、今でも高橋成厩舎の厩舎服を着ていますね。

「そうですね、それは高橋成先生に育てていただいた恩を忘れないためです。これからもずっと着続けるつもりです。この厩舎服を着ると背筋がピンと伸びる感じがするんです」

――馬との出会いではサンレイデュークで初重賞を勝ちました。

「この馬との出会いは本当に大きいものでした。重賞も勝たせてもらったことに加え、中山大障害、中山グランドジャンプに何度もつれていってもらっています。ただ、あの馬に出会う前にもっと経験値を積んでいれば、大舞台で勝負できたのではないかと、今では思います。ですから、サンレイデュークとの経験をこれからも生かしてタイトルをとっていかないといけないと思っています」

――今、若い騎手でも壁にぶち当たっている人が多いと思います、難波騎手から言葉を送るなら。

「僕も苦しい時期がありましたが、とにかく腐らずに自分にできることをコツコツと続けることだと思います。見ている人は見ています。その頑張りに馬も応えてくれると僕は信じています」

――今後の目標は。

「サンレイデューク以来、重賞を勝てていないので重賞を勝ちたいですし、中山グランドジャンプ、中山大障害というG1を勝ちたいです。特にこの2つのG1レースはコースも障害もタフですから、乗り終えたあとの達成感は半端ないですね。だから勝ったらどんな気持ちを味わえるのかと思います」

――夢は何かありますか。

「サンレイデュークが誘導馬の訓練を受けているので、彼の誘導で中山のG1に臨んで優勝して彼に報告できたら幸せですね」

「腐らずコツコツ努力」が一番の才能

かつて難波騎手が故障で戦線を離脱していたとき、苦しい時期にもかかわらず「リハビリ頑張っています、心折れていませんから」という言葉を聞きました。彼の一番の才能は「腐らずコツコツと努力を重ねることができる」ことだと思います。簡単なようでとてつもなく難しいことでしょう。ただ、色々と壁にぶつかって悩んだとき、どうしようもないとき、難波騎手の生き方はヒントになるかもしれません。このような生き方をしてきたからこそ多くの「絆」が彼を後押ししていたのだとも思いました。

 難波騎手は取材後の6月22日、東京競馬場で行われた東京ジャンプステークスで落馬し、現在負傷療養中です。一日も早い回復とレースへの復帰を心からお祈り申し上げます。

(ラジオNIKKEIアナウンサー 檜川彰人)

 各アナウンサーが出演、ラジオNIKKEIの競馬番組はこちらでチェック! http://www.radionikkei.jp/keibaradio2/

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