2019年8月21日(水)

緩和路線継続、市場が期待 欧州中銀総裁にラガルド氏

2019/7/3 23:00
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次期ECB総裁に指名されたラガルド氏=ロイター

次期ECB総裁に指名されたラガルド氏=ロイター

【ブリュッセル=石川潤】欧州連合(EU)は2日の臨時首脳会議で、欧州中央銀行(ECB)の次期総裁にフランス出身のラガルド国際通貨基金(IMF)専務理事を選んだ。金融引き締めに積極的なタカ派の総裁起用が見送られ、市場には緩和路線の継続に期待が広がる。ただ欧州景気が減速するなかで新たな政策手段は限られており、金融政策の手腕が未知数のラガルド氏にとって厳しい船出となる。

欧州委員長にはドイツのフォンデアライエン国防相を指名した。女性のトップはいずれも初めてで、独仏で政治・経済の有力ポストを分け合った。欧州メディアによると、人事案はマクロン仏大統領がメルケル独首相に提案した。

ラガルド氏は米有力法律事務所の幹部も務めた労働法専門の弁護士だったが、2005年に母国の貿易担当相に抜てきされて政界入りした。仏経財相やIMF専務理事として08年のリーマン・ショック、10年代前半の欧州債務危機など修羅場を切り抜けてきた。交渉術や危機管理能力の高さは折り紙つきだ。

ギリシャ支援などを通じて、メルケル氏ら各国首脳とも信頼関係を築いたことが今回の起用につながった。トゥスクEU大統領は2日の記者会見で「完璧なECB総裁になる」と、国際的な人脈や組織運営の巧みさを持ち上げた。

IMF専務理事として最近の貿易戦争で主要国が互いの足を引っ張り合う状況を「自傷行為」と非難してきた。トランプ米大統領による金融政策への介入を強く批判するなど、中央銀行の独立性にも理解を示す。

市場ではドラギ総裁の金融緩和路線が大きく変更されるリスクは後退したとの見方が広がる。11月1日に就任する次期総裁の候補には当初、タカ派で知られるドイツ連銀のワイトマン総裁も有力視されていたためだ。

英ブラック・クイリン・インベストメンツのスティーブン・ミッチェル投資ヘッドは「ラガルド氏はドラギ氏の(金融緩和に前向きな)ハト派路線を引き継ぐ」と予想する。ラガルド氏起用の報道を受けて、外国為替市場では一時、ユーロが売られた。

一方、過去のECB総裁が中央銀行出身の専門家だったのと比べ、ラガルド氏に金融政策の実務経験がないことを不安視する向きもある。ラガルド氏はEUの政治ポストに就く可能性も取り沙汰されてきただけに、ECB総裁への起用には意外感も広がった。

もっとも政策金利がゼロに張り付き、金融政策が「非伝統的政策」と呼ばれる領域に入るにつれて、中央銀行トップに求められる能力も変わりつつある。ドラギ総裁が12年に「何でもやる」と宣言して欧州債務危機の拡大を食い止めたように、市場との対話で信頼関係を築くことが政策効果を引き出すうえで重要になっているとの指摘は少なくない。

足元の欧州経済は主要国・地域の中でも減速感が強く、物価上昇率はECBが目標とする「2%近く」に遠く及ばない状況が続く。米連邦準備理事会(FRB)が緩和路線への転換を模索するなか、ドラギ総裁も追加緩和を辞さない構えをみせるが、手段はほぼ尽きているというのが実情だ。

BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「すでにマイナス金利政策を進めているECBの対応余地は限られる」と指摘する。ラガルド氏の神通力が試される局面は遠からず訪れる。

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