2019年8月23日(金)

経産省支援のJスタートアップ 、目指すは世界市場

日経産業新聞
コラム(ビジネス)
2019/7/4 4:30
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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

経済産業省はグローバルで成長する日本のスタートアップ企業を支援する事業「J-Startup(Jスタートアップ)」の支援対象で新たに49社を選んだ。日本では起業家を支える資金は増えているが、世界で活躍する企業は少ない。「2023年までに(企業価値10億ドル以上となる)新興企業20社創出」という目標に向け、海外機関や大企業と連携を強める。

Jスタートアップの発表会で話すセンシンロボティクスの間下氏(右端)とシナモンの平野氏(右から2人目)ら

Jスタートアップの発表会で話すセンシンロボティクスの間下氏(右端)とシナモンの平野氏(右から2人目)ら

■米国の家電見本市にブース

「大企業には多くの人材や資金、機会が眠っている。スタートアップの成長に生かさない手はない」。世耕弘成経産相は24日に都内で開いたイベントで、こう強調した。

Jスタートアップは国の成長戦略の一環で18年6月に始まった。ベンチャーキャピタル(VC)や大企業の新規事業担当者らスタートアップ支援に携わる有識者から有望企業の推薦を受け、18年度はこの中から92社を選抜。海外展開などを集中的に支援している。

これまでの取り組みでは、19年1月に米ラスベガスで開催された世界最大の家電・技術の見本市「CES」にJスタートアップの出展ブースを設けた。経団連や経済同友会に参加する大企業の経営者と引き合わせる会も開催した。Jスタートアップ企業には、あらゆる政府の調達に応札できる特権も与えている。

今年はCESに加え、9月に独ベルリンで開かれる国際コンシューマ・エレクトロニクス展(IFA)にも出展する。医療やロボティクスなどの専門家も推薦委員に加えた。自治体と連携し、地域のスタートアップも重点支援する方針だ。

東京以外に本社を置く企業は18社が選ばれた。新卒採用支援サービスのi-plug(アイプラグ、大阪市)の中野智哉社長は「新卒採用は規制やルールも多いが、企業だけで国にアプローチするのは難しかった。Jスタートアップに選ばれたことで、規制緩和など国との対話が進みやすくなりそうだ」と期待する。

人工知能(AI)を使って企業のデータ作成を効率化するシナモン(東京・港)の平野未来代表は「オープンイノベーションに期待したい」と話す。最近では多くの大企業から実証実験など連携の話が持ち込まれるようになったが「大企業は意思決定が遅い」。選出を機にスピードアップを目指し、米国など海外でのビジネスも開拓する。

■日本が有利な領域も

日本が有利な領域もあるという。ドローン向けソフトウエアを開発するセンシンロボティクス(東京・渋谷)の間下直晃社長は「ドローンは世界でも産業が確立されておらず、日本が先行できる分野」と指摘する。

特に少子高齢化や過疎化が進む地方で、人手不足の対策としてドローンによるインフラ点検などの需要が大きいとみる。ただし現状では自治体などの規制が厳しいため「自治体に機動的な対応を提案したい」という。

VCなどの支援者も選ばれたスタートアップや政策に期待を寄せる。日本ベンチャーキャピタル協会の仮屋薗聡一会長は「最初からグローバルを意識する起業家が増えるなど、視座が上がっている」との見方を示す。

しかし過去の日本企業の海外進出では「失敗も多かった」と指摘。「トップが海外にコミットすることや、国内で経営の土台がしっかりしていることが必要」と話す。

技術系企業に投資するビヨンドネクストベンチャーズ(東京・中央)の伊藤毅社長は「研究開発型スタートアップは、民間からの株式調達だけで研究開発の資金を賄うのは難しい。Jスタートアップに選ばれることで、融資や補助金を受けやすくなる」と期待する。

■国は規制緩和の努力を

国から選ばれたことが将来の成功を保証しているわけでは決してない。18年度の支援対象だったセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズは洗濯物自動折り畳み機の開発で話題を呼んだが、4月に経営破綻した。官民の支援は有効だが、スタートアップ自身の努力が最も重要であることは言うまでもない。

一方で、国は一部の企業を重点支援するだけでなく、幅広い企業が活動しやすい規制緩和を進めることも求められる。

(企業報道部 鈴木健二朗、高橋徹)

[日経産業新聞 2019年6月26日付]

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