2019年9月16日(月)

勝利のメンタリティー(山本昌邦)

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やるべきこと見えた 男女日本代表、実り多き敗退

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2019/7/4 6:30
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そもそも、批判は正確でもない。今回のチームは純然たる22歳以下(来年は23歳以下)の五輪代表ではなく、各ラインにGK川島(ストラスブール)、DF植田(セルクル・ブリュージュ)、MF柴崎(ヘタフェ)、中島(アルドハイル)、FW岡崎(レスター)というオーバーエージ(OA)の実力者を配していた。だからこそ1次リーグでウルグアイやエクアドルと引き分け、準々決勝に進む寸前まで行けた。実力的には、外野からとやかく言われるようなチームではなかったわけである。

今回は初戦に向けたコンディションづくりが難しかった。日本からの長旅、時差調整、過密日程、初めて顔を合わせる選手もいたチーム編成……。いろいろなことが未消化なまま前回王者チリと対戦し、0-4というスコアで大敗した。結果的に得失点差でベスト8に行けなかったことを考えると、この4失点は痛かった。

2戦目のウルグアイ、3戦目のエクアドル戦のリバウンドぶりは見事だった。若い選手の吸収力のすごさだろう。1戦目の反省を生かして、選手の距離感や立ち位置やプレスの掛け方を大きく改善させた。強い相手と真剣勝負を戦える醍醐味が若い選手の覚醒を促したといっていい。フレンドリーマッチでは到底起こりえないことであり、熱いうちに鉄を打つ最高の機会をもらった。

南米選手権のエクアドル戦で、競り合う久保建(右)=共同

南米選手権のエクアドル戦で、競り合う久保建(右)=共同

その象徴が18歳の久保建(レアル・マドリード)で、主審や相手の選手とスペイン語で平気でやり合い、相手の挑発にひるむこともまったくなかった。あらためて、恐ろしいメンタリティーの持ち主だと感じた。新シーズン、新天地に選んだスペインでどれだけやれるか本当に楽しみだ。

若手が吸収力の高さなら、OA組はトータルな質の高さを見せつけた。柴崎も岡崎も川島も南米勢と堂々と渡り合い、持てる力をきっちり披露した。そういう実力者のたたずまいを普段の生活から学べる機会を今回は設けられた。現時点でOAの最有力候補といえる柴崎を中島、久保建、三好(横浜M)といった、イキのいい2列目と絡められたのも大きい。これは来年の東京オリンピックはもちろん、10年先まで生きる話ではないだろうか。

「コパアメリカでの戦いが、この10年の日本サッカーの礎になった」

そう言えるときが必ず来る気がしている。心から「ありがとう」とコパに対して言える日が。

VARに萎縮し、おびえているよう

最後に、今回のコパで一番気になったことに触れておきたい。審判というか、判定の在り方が妙になってきたことである。ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)があまりに出しゃばり過ぎなのだ。そのせいで追加タイムが何分あっても足りない状況になっていた。そのうち8分、9分、10分という追加タイムがざらになり、試合が冗長になるのではないかと心配になったほど。

VARの対象をもっと絞らないと、いちいち試合が止まってテレビ画面にやたら主審が映るようになる。われわれが見たいのは主審の顔などではないのに。

南米選手権のブラジル―パラグアイ戦でVARのチェック後、フリーキックを指示するレフェリー=AP

南米選手権のブラジル―パラグアイ戦でVARのチェック後、フリーキックを指示するレフェリー=AP

VARによって副審のレベルが一気に落ちる心配もある。副審からプライドも奪うようになるのではないかと。オフサイドの判定にその兆候は既にあり、オンサイドだったものをオフサイドに取ってしまうことを恐れるあまり、副審が勇気を持って旗をあげるより、とりあえずスルーして後で機械に判定してもらうことを選ぶようになっている。

日本には2006年W杯の3位決定戦を任された広嶋禎数さんという世界に誇る副審がいた。VARは、こういう名人の数センチ単位でオフサイドを見極める職人芸を継承させずに、遅かれ早かれ、廃れさせる方向に導いてしまうのではないか。

副審だけではなく、主審もVARに対して萎縮し、おびえているように見える。女子W杯のオランダ戦の熊谷のハンド(PK)も決して故意ではないだろう。手をボールに当てにいったわけではない。それがスローで再生すると手に当たった事実だけがやたらクローズアップされてしまう。

サッカーの最大の魅力である、感情の爆発にもVARは水を差している。ゴールが決まっても、後でVARに取り消されると、ぬか喜びになる。それで素直に喜べない。シュートが決まっても「大丈夫?」みたいな感じで選手もファンも中途半端というか。

VARの課題と改善の余地がはっきりと見えた、コパアメリカだったと思う。

(サッカー解説者)

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