2019年9月19日(木)

勝利のメンタリティー(山本昌邦)

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やるべきこと見えた 男女日本代表、実り多き敗退

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2019/7/4 6:30
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6月のほぼ同時期、男子のサッカー日本代表はブラジルで行われた南米選手権(コパアメリカ)に、女子日本代表の「なでしこジャパン」はフランスで行われたワールドカップ(W杯)に参加した。男子は惜しくも得失点差でベスト8進出を逃し、なでしこは決勝トーナメント1回戦(ベスト16)でオランダに惜敗した。そろって道半ばで倒れたが、私は男女とも「実り多き敗退」だったと思っている。

足りないことを知った。やるべきこと、やれることも見えた。そんな6月だった。

女子のW杯は欧州勢の台頭が予想以上だった。特にイングランド、フランスの充実が目についた。

女子W杯準決勝の米国戦後、選手たちに話をするイングランドのネビル監督=ロイター

女子W杯準決勝の米国戦後、選手たちに話をするイングランドのネビル監督=ロイター

イングランドのフィル・ネビル監督はマンチェスター・ユナイテッドでサー・アレックス・ファーガソンの薫陶を受けた名選手だった。そういう経験のある人物を持ってきたこと自体、女子サッカーへの取り組みがイングランド・サッカーの中で変わってきたということなのだろう。準決勝で惜しくも米国に敗れたが、今後もライバル関係を築いていくに違いない。

日本は1次リーグでややもたついたが、ベスト8を懸けたオランダ戦は素晴らしいゲームをした。終盤はギアを上げ、オランダを一方的に押し込んだ。得点機を再三つかみながら、決めきれないうちに逆襲からPKを取られ、決勝点を許した。ベスト16が出そろった段階でトーナメント表を見て、私個人は「ベスト4まで行ける」と踏んでいたから本当に残念だった。

なでしこのパスワーク、十分に通用

なでしこのシュートが決まらなかった理由の一つに世界レベルのGKの質の高さがあるように思う。国内リーグなら決まるはずのシュートが決まらない。これはコパアメリカで悪戦苦闘した、メンバーで唯一の大学生だったFW上田(法大)にもいえることだろう。大学リーグとコパではGKが放つオーラに格段の差があり、シュートが入る感じがしなかったのではないか。

今回の女子W杯はプレーの高速化も顕著だった。身体的なスピードはもちろん、判断の速さが伴って、動き出しの速さも上がったように感じた。そういう部分も含めて欧州勢の伸長は脅威だった。

そういう列強に対し、なでしこのパスワークは米国や欧州勢にない独特なもので、十分に通用していたように思う。下を向く必要はまったくない。

日本の誤算は、宇津木(シアトル・レイン)や阪口(日テレ・ベレーザ)といった経験豊富な選手のコンディションが整わず、使えないまま終わったことではないだろうか。その結果、ピッチ上で主将の熊谷(リヨン)に負担がかかりすぎたように感じた。攻撃面で期待された長谷川や籾木(ともに日テレ・ベレーザ)をケガで十分に使い切れなかったのも惜しまれる。

女子W杯のイングランド戦で競り合う熊谷(右)=ゲッティ共同

女子W杯のイングランド戦で競り合う熊谷(右)=ゲッティ共同

来年の東京オリンピックは23人登録のW杯と違って18人しか使えない。選考も含めた準備段階から、初戦から決勝までフルに使える選手とそうでない選手の線引きをシビアにやらなければならない。

もっとも、頼れるベテランが使えない状況の下で、中堅や若手に出番が増え、貴重な経験を積ませることができた。来年のオリンピック本番をにらめば、選手層を厚くできたとポジティブにとらえるべきだ。U-20(20歳以下)W杯チャンピオンである遠藤(日テレ・ベレーザ)、南(浦和レッズ・レディース)らは得難い経験をしたことだろう。

あのドイツですら、ベスト4に入れず、来年の東京オリンピックの出場権を逃した。そういうハイレベルな大会では、ほんのわずかな差が勝敗を分け、ひいてはサッカー人生をも左右する。そんな厳しさを、若いなでしこたちが、ここで知れたのは来年のオリンピックに必ずつながる。ここから1年、彼女たちは猛烈に自分自身にドライブをかけるに違いない。

若い選手の吸収力で見事にリバウンド

男子の方は、南米の一部メディアから「由緒ある大会に日本は若い五輪チームを派遣してきた」と批判する向きもあったらしい。われわれには来年の東京オリンピックで表彰台の一番高いところに立つという大望がある。そのためにコパという真剣勝負の場をフルに活用させてもらったわけで、その程度の批判は甘んじて受けるしかない。

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