2019年8月23日(金)

母子家庭助けるシェアハウス、全国で開設 支援組織も

2019/7/3 11:39
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母子家庭だけを対象としたシェアハウスが広がり始めた。公的な住まいの支援策は乏しく、母子世帯は収入が不安定だとして民間賃貸でも入居を断られるケースが目立つ。ひとり親の孤立や貧困を防ごうと全国の運営事業者がノウハウを共有する取り組みが始まり、自治体がシェアハウスの開設に乗り出す例も出てきた。

シングルマザーのシェアハウス「MOM-HOUSE」の共用リビング(千葉県)

「お出かけするの?」「行ってらっしゃい」。6月の週末の朝、千葉県流山市のシングルマザー専用シェアハウス「MOM-HOUSE(マムハウス)」で幼児を抱いた女性らのにぎやかな声が響いた。地元で不動産会社を営む加藤久明さん(47)が2016年に開き、これまでに26世帯が入居した。

外見は一般的なマンションと変わらないが、ベビーカー置き場や共用リビングがあり、18部屋にはそれぞれトイレや風呂、台所が設けられている。礼金は不要で家賃は月4万9千円から。夫のドメスティックバイオレンス(DV)から逃げて、着のみ着のまま入居する例もあるため「初期費用がかからないように」と家具や食器、トイレットペーパーまで備える。

1階のクリーニング店は「母親の就労先になれば」と加藤さんが開店した。「大きい家族みたいな暮らしで、私も子供もすごく元気になった」。関東近郊から今春転居し、店で働く女性は笑顔を見せる。

元夫の暴言でうつ病を発症し離婚したが、居所が知られていたため、おびえながらの暮らしが続き、心身の不調が長引いていた。「新しい生活を始めたい」とインターネットで検索し、このシェアハウスにたどり着いたという。

母子家庭向けシェアハウスは全国に増えている。住宅福祉に詳しい日本学術振興会特別研究員の葛西リサさんによると、若者や外国人向けシェアハウス運営をしてきた不動産事業者に母子世帯からの入居相談が増えたことなどを機に08年以降に母子も対象に広げ、現在は20件ほどある。

18年からは葛西さんを中心に「母子世帯向けシェアハウス全国会議」を開き、事業者らが情報交換を進めている。「精神疾患のある母親に困っている」「福祉サービスにつなぐ方法は」。事業者の悩みには共通点が多く、事業者が住民トラブルや集客の難しさに直面して撤退する例もあるという。

会議のメンバーで複数のシェアハウスの企画を手掛けた横浜市の建築士、秋山怜史さん(38)は今夏、NPO法人「全国ひとり親居住支援機構」を立ち上げる。「事業者が連携してノウハウを蓄積し、児童相談所や精神科の専門家などともつながって母子を支える仕組みを作りたい」と話す。

群馬県は7月に前橋市内の県営住宅にシングルマザー専用シェアハウスを開いた。近く1世帯が入居する。民間のシェアハウスを視察し、5階建て県営住宅の3階部分をシェアハウス仕様に改装した。

モデル事業として月1回程度の交流イベントを開き、1階には地域の高齢者や子供が自由に使える広場を設ける。県子育て支援係の木村茂生係長は「1人で子育てする不安を解消して自立に向かってほしい」と期待する。

持ち家率35%、「父子」より低く
 母子家庭を取り巻く住宅環境は厳しい。厚生労働省の2016年度の調査によると、母子家庭の持ち家率は35%で賃貸住宅が33.1%。一方で、父子世帯は持ち家率が68.1%に上る。児童福祉法に基づく「母子生活支援施設」(旧母子寮)は認知度の低さなどから利用が乏しく、施設数も1960年代の650施設をピークに減り続けており、17年度は227施設となった。
 日本学術振興会の葛西リサ特別研究員は「公営住宅は希望先に空きがないことが多く、民間賃貸物件も収入が不安定として断られがち。住宅確保に苦労し、就労や自立どころではない母親も多い」と指摘する。母子家庭専用のシェアハウスの広がりに期待し「行政を巻き込んで福祉サービスと連動させながら地域全体で母子家庭を見守ってほしい」と話す。

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