米関税拡大の対象候補に盛り込まれたスコッチウイスキー=ロイター
【ロンドン=篠崎健太】英スコッチウイスキー協会は2日、トランプ米政権が検討している欧州連合(EU)への追加関税の拡大対象にスコッチウイスキーが含まれたことに「巻き込まれて失望している」との声明を出した。関税が導入されれば米・EU双方の経済に悪影響を及ぼすと主張し、回避するよう関係する政府に強く求めた。
米政府はEUが欧州航空機大手エアバスに不当な補助金を与えていると主張し、EU製品に報復関税を課そうとしている。米通商代表部(USTR)は1日、4月に公表した210億ドル(約2兆3000億円)分に加え、新たに40億ドル分の品目候補リストを公表した。チーズやオリーブなどのほか、スコッチウイスキーが盛り込まれた。
英北部スコットランドには約130の蒸留所があり、そこで作られるスコッチは米国が最大の輸出相手国だ。2018年は全輸出額約47億ポンド(約6400億円)のうち、米国は10億ポンドと2割強を占めた。スコッチ協会によると、米ウイスキー市場でスコッチは12%を占める。今はかからない関税が導入されれば小売価格に転嫁される可能性が高い。
米欧のウイスキー業界は生産現場でもつながりがある。同協会によると、米国のバーボンウイスキーの生産に使われたたるをスコッチの熟成に利用することで、米経済に年間約7000万ポンド(約95億円)の貢献をしているという。航空機の補助金問題と無関係な業界への関税導入は理不尽だと訴えている。
一方、米ウイスキー業界も拡大案に反発している。米蒸留酒協議会は報復関税などで米国の雇用や消費者に大きな打撃になり得るとし「強く反対する」とコメントした。