2019年8月23日(金)

大学入学共通テスト、制度設計に甘さ TOEIC離脱

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2019/7/2 21:17
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大学入試センター試験の後継となる大学入学共通テストに採用される英語の民間試験で、認定された7団体8種類の試験のひとつである英語能力テスト「TOEIC」が2日、参加を取りやめると発表した。受験から成績提供までの日程など、参加を決めた時点ではセンター側から示されていなかった要望に対応できないと判断した。民間試験活用に向けた拙速な進め方が露呈した形だ。

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「大学入試センターから示された課題を全て解決する方法を見いだせなかった」。TOEICを運営する国際ビジネスコミュニケーション協会(東京)の担当者は、共通テストからの離脱を決めた理由をこう話す。日程面などでの要請に応えられなかったという。

2018年3月に共通テストへの参加が認定された時点では、民間試験の初回の受験期間は20年4~12月と示されたが、受験後の成績提供に至るスケジュールなどは未定だった。

18年12月に総合型選抜、学校推薦型選抜、一般選抜など大学受験の種別に合わせ、段階的に成績を提供する方針が示された。一部の学生には早めに成績を提供しなくてはならず、TOEICのシステムでは困難だった。試験日程が他国と共通で、同協会の一存では決められないことも足かせとなったという。

TOEICは共通テストに参加する8試験の中で唯一、「聞く・読む」(L&R)と「話す・書く」(S&W)の試験を別々に実施している。2つの試験は申し込みも別で、試験日や結果提供の時期も異なる。

共通テストでは「読む、聞くなどの4技能を1回で評価する」とし、2試験の日程を近づけるなど一体的な運用が求められる。TOEIC側は運営システムの大幅な変更が必要で、

会社員など年間約120万人が受験するTOEICの運営全体に大きな支障が出る可能性があると判断した。

協会幹部は「当初は2つの試験の成績を足してセンターに提供すれば問題ないと考えていた」と打ち明ける。一方でセンターは「当初から一体運用を求めていた」としており、意思疎通の甘さもあったとみられる。

センターはTOEICの離脱に「(運営主体の)協会のやむを得ない判断。民間試験活用のシステムの信頼が揺らぐものではない」としている。

文部科学省によると、他の6団体には現時点で離脱の予定はない。英検を実施する日本英語検定協会は「受験生の将来に関わるという責任を認識し、準備を進めている」、GTECを運営するベネッセコーポレーションは「従来の方針に変わりはない」としている。

同省はTOEICの参加取りやめを受け、共通テストの運用指針を修正する。指針は離島やへき地に住む場合は、高校2年で受けた民間試験の成績が優秀ならば、翌年度に受けた結果として代用できると規定。TOEICは参加取りやめで本来は規定の対象外となるが、既に受験した受験生がいる可能性などを踏まえ、20年3月までの試験結果を認める。

受験生への影響に懸念の声

TOEICの大学入学共通テストへの参加取りやめを受け、受験生への影響を懸念する声が広がる。

文科省が2018年に全国の高校1年生を対象に調査したところ、全生徒の1.8%(のべ約2万3千人)がTOEICを受験すると回答した。ビジネスを意識した試験内容で、商業高校の生徒らが受けようとしていた例が多いとみられる。

全国商業高等学校長協会の担当者は「TOEICでいい成績を収めようと努力してきた生徒らは勉強方針を変える必要があり、教師も対応が迫られる」と話す。

民間試験導入を巡っては語学が専門の大学教授らが6月、中止を求めて署名を添えた請願書を衆参両院に提出したばかりだ。教授らは「各試験の測ろうとする英語力は異なる。目的が違う試験同士を比べるのは妥当でない」と訴える。

各試験は受験料がかかるほか、地域によって実施回数や会場数に差が出る見込みだ。高校教諭らは具体的な日程や会場で未定の部分が多く、受験対策の計画が立てづらいと指摘する。

和歌山県議会は6月27日、受験生の不安解消を政府に求める意見書を全会一致で可決した。運営団体に生徒間で不平等が生じないよう試験会場などを設定させるよう要請している。

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