2019年8月23日(金)

金融規制、中国首相「撤廃1年前倒し」 20年に全額出資可能

トランプ政権
米中衝突
貿易摩擦
2019/7/2 18:41
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【大連=原田逸策】中国の李克強(リー・クォーチャン)首相は2日、外資が中国で証券や生命保険事業を手がける場合の出資規制の撤廃について「当初予定の2021年から1年、前倒しする」と表明した。20年から外資の全額出資を認める。交通、通信、インターネットの外資規制も20年に緩める。米国との貿易戦争で進む外資撤退への危機感が背景にあり、米国との協議で譲歩策として示した可能性もある。

2日、中国・大連での夏季ダボス会議の開幕式で講演する李克強首相

「中国の金融開放が止まるどころか加速することを全世界に示すのが撤廃前倒しの目的だ」。2日、世界経済フォーラムが主催する中国・大連での夏季ダボス会議の開幕式で、講演した李氏がひときわ力を込めると会場は大きな拍手で沸いた。

李氏は講演で、証券、生命保険、商品先物の外資出資規制の廃止を21年から1年前倒しすると明らかにした。これらの分野では18年に過半出資が認められ、21年に規制をなくす計画だった。

交通や通信、インターネットでも李氏は「20年に外資への規制を減らす」と言明した。現状では、航空会社は中国が過半出資したうえ、代表者も中国籍でなければならない。電話など通信は中国の過半出資が必要で、急成長するインターネット事業も外資出資は最大50%に制限されている。

クレジットカード、格付け業務など中国が市場開放を約束しながら、外資参入が遅々として進まない事業についても李氏は「内外無差別の約束を実現する」と強調した。

背景にあるのは外資撤退への危機感だ。18年7月に米国が中国からの輸入品に制裁の追加関税をかけてから1年。外資の製造拠点は中国から東南アジア諸国に移転する動きがじわりと広がる。

中国の清華大学が6月にまとめた報告書は、米アップルの大口取引先の台湾企業を列挙し「生産拠点を東南アジアに移し始めている。追加関税で供給網の移転が加速しており、注意すべきだ」と指摘した。中国で活動する米企業でつくる中国米国商会が5月に実施した調査では、会員企業の4割が「生産拠点を移転したか検討中」と答えた。

李氏が2日に言及したのはサービス業の開放が中心だ。撤退する製造業に替わる新たな外資参入をサービス業で実現し雇用拡大や業界の合理化につなげる思惑が透ける。

米国への譲歩との見方もできそうだ。金融やネットはいずれも米国が中国との貿易協議で開放拡大を求めてきた。特に金融は「なぜ外資規制撤廃まで3年もかかるか理解できない」(ムニューシン財務長官)と米国が強く主張していた分野だ。

6月末の習近平(シー・ジンピン)国家主席とトランプ米大統領の首脳会談では、米国が3千億ドル(約33兆円)分の中国製品への追加関税を先送りし、貿易協議の再開でも合意した。トランプ氏は中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)への米商務省の制裁緩和もにおわせた。米国の譲歩が大きいため「中国も何か譲ったはず」との見方がくすぶっていた。

「中国経済は全体として安定している」。李氏は講演で、低い失業率、活発な起業などを具体的な数字を並べて説明し、中国経済への不安の払拭にも努めた。仏カルフールや高島屋など外資小売業の撤退が相次ぎ、中国市場の将来性に疑問符がつき始めているからだ。

3月の博鰲(ボーアオ)アジアフォーラムで「1~3月の経済回復は我々の予想を超えた」と発言した李氏の強気の姿勢は消えていた。「中国経済は新たな下振れ圧力に直面している。(振るわない)外資の輸出、投資のいずれも貿易が影響している」として貿易戦争の打撃を率直に認めた。

それでも講演では新たな景気対策への具体的な言及はなかった。金融政策は「穏健を保ち、バラマキはしない」、財政政策も「大規模減税で財政収支の矛盾が突出している」と追加対策に慎重な姿勢をにじませた。

中国の製造業の購買担当者景気指数(PMI)は6月まで2カ月連続で節目の50を下回り、事業悪化を示した。中国は米国との首脳会談で貿易戦争の激化を回避したが、こだわった追加関税の取り消しは実現しなかった。追加関税がボディーブローのように中国経済を下押しする展開も予想される。

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