イラン、濃縮ウラン貯蔵が規定超え 核合意に違反

イラン緊迫
2019/7/1 21:52
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イランは低濃縮ウランの増産を加速させている(6月の上海協力機構首脳会議に出席するロウハニ大統領)=AP

イランは低濃縮ウランの増産を加速させている(6月の上海協力機構首脳会議に出席するロウハニ大統領)=AP

【ウィーン=岐部秀光、ドバイ=木寺もも子】イランのザリフ外相は1日、低濃縮ウラン貯蔵量が2015年の核合意で規定した300キロを上回ったと明らかにした。米国が一方的に核合意から離脱して以降、イランが合意義務に違反するのは初めて。米国や欧州に圧力をかける狙いだが、これまでイランに同情的だった欧州などの支持を失う恐れもある。核合意は崩壊に近づきつつある。

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ザリフ氏の発言をイランメディアが伝えた。ロイター通信によると、国際原子力機関(IAEA)もイランの規定超過の事実を確認した。

イランは米国の制裁によって歳入の柱となる原油輸出がままならず、経済的に困窮している。「一方的に核合意の義務だけを果たす負担が大きくなった」と主張し、5月以降、低濃縮ウランの製造を加速し輸出を停止することで貯蔵を増やすなど、義務履行を一部停止すると予告していた。

6月28日にウィーンでイランと英独仏中ロが開いた実務者協議では、欧州がイランとの貿易を継続するために設立した貿易取引支援機関(INSTEX)の準備完了が報告された。ただ原油取引ができるめどは立たず、イラン側は「まだ不十分」と評していた。イラン国営メディアによると、ザリフ氏は1日、「欧州がすべきことをすれば、我々の手段は巻き戻し可能だ」と発言した。

ウランの貯蔵量が規定を上回ったからといってイランがすぐに核兵器を持てるようになるわけではない。遠心分離機の稼働数は大きく制限されたままで、IAEAの査察官もイラン国内で活動を続けている。イランが万一、核兵器を保有する意思を固めたとしても、核爆弾1個を取得するまでの時間(ブレークアウトタイム)は、なお1年以上あるとみられている。

問題は核合意で目指した信頼醸成が大きく傷つけられたことだ。イランは7月7日までに英独仏中ロが、原油販売や金融決済で米制裁を回避するための方策を示さなければ、さらに義務停止の範囲を広げると宣言している。核兵器開発までの時間を短縮することになるウラン濃縮度の引き上げに着手すれば、欧州もイランの擁護は難しくなる。

イランの最高指導者ハメネイ師は、核兵器の保有の意図を明確に否定するが、義務違反を繰り返す瀬戸際戦術は、米国内のタカ派やイスラエルにイラン攻撃の口実をあたえかねない。6月半ばに発生したタンカー攻撃事件の真相はいまだに不明で、こうした事件が偶発的な衝突を引き起こすリスクが一段と増す。

イランの核武装の脅威はアラブ諸国も刺激する。サウジアラビアはイランが核武装すれば自国も核開発を進めざるを得ないとしている。

トランプ米大統領は対イランで「最大限の圧力」をくわえた後に有利な状況で交渉のテーブルに相手を引き寄せる北朝鮮との体験をなぞろうとしたとみられる。結果的にはロウハニ大統領やザリフ氏らイランの穏健派が窮地に立たされた。米国に対して深い不信感を抱く保守強硬派が国内の政治を主導している。

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