地価、訪日客・高齢者回帰が追い風に 19年の路線価

2019/7/1 20:00
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訪日外国人の増加と高齢者の都市部への回帰が地方の地価を下支えしている。国税庁が1日発表した2019年分(1月1日時点)の路線価によると、訪日客に人気がある沖縄県などの地価が上がり、地方でも高齢者が戻り始めた中心地での回復が目立った。資産価格の動きは消費も左右する。持続的な上昇には、経済の構造変化に合わせた街づくりが欠かせない。

金沢市を訪れる外国人観光客

全国平均の路線価は前年比1.3%上がり、4年連続上昇した。上昇率はこの4年で最も高かった。

地価を押し上げた要因の一つが訪日客の増加だ。訪日客に人気がある地域ではホテルや商業施設の建設需要があり、地価が上がりやすい。都道府県別で見た上昇率のトップは訪日客も多い沖縄県の8.3%だった。東京都も4.9%の上昇で、上昇率は18年の4.0%より拡大している。

出遅れていた地方でも回復の動きがある。石川県と大分県は27年ぶりに上昇に転じた。0.7%の上昇だった石川県は北陸新幹線による効果が続き、金沢市のホテル客室数は人口がおよそ5倍の名古屋市に匹敵している。大分県は別府市と由布市を中心とした温泉が有力な観光地として人気がある。

関東、関西、中部以外の地方を訪れる訪日客は増えている。2019年の観光白書によると、18年の三大都市圏以外の地方での訪日客消費は都道府県合計の28.5%と、15年より約5ポイントあがった。路線価は27県で下落が続いたが、22県では下落幅が小さくなった。

高齢者の中には病院や商業施設が徒歩圏内にあり、暮らしやすい都市部に移り住む人もいる。こうした需要が地方でも駅前や商業施設の周辺などの地価を支える。中心地でも長期間にわたって地価が下がってきたため、値ごろ感もあるという。三井住友トラスト基礎研究所の北村邦夫研究理事は「地価の下落を好機に身の丈に合った地域開発を進めていくべきだ」と指摘する。

一方で人口減は地価下落の圧力として残る。19年は福井県と和歌山県で下落率が大きくなり、プラス圏にあった滋賀県は下落に転じた。福井では郊外の大型商業施設への顧客流出や店主の高齢化による店舗需要の低迷が響いている。地価が下がると資産価格が目減りし、消費に逆風となる。地方経済にとっても打撃だ。

大都市は人口の流入もあって地価が上昇してきたが、一部では一服感も出てきた。34年連続の全国トップで東京・銀座にある「鳩居堂」前の銀座中央通りは1平方メートルあたり前年比2.9%上昇の4560万円だったが、伸び幅は昨年の9.9%から鈍化した。横浜の最高価格地点は伸び幅が横ばい、名古屋は縮小している。

背景にあるのが投資マネーの減速だ。都市未来総合研究所によると、昨年度の不動産取引額は約3兆6千億円と、12年度以来6年ぶりに4兆円を割った。物件価格の高騰で過熱感が意識されているためだが「投資対象物件の品薄化が背景にあり、投資意欲が衰えているわけではない」(同社の平山重雄常務研究理事)という指摘もある。

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