G20後の世界 内向く米中、危うい休戦

2019/7/1 2:00
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29日、20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)に参加したトランプ米大統領(左)と中国の習近平国家主席=AP

29日、20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)に参加したトランプ米大統領(左)と中国の習近平国家主席=AP

トランプ米大統領は北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長と板門店で会談し、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席とは大阪での首脳会談で貿易協議の再開を決めた。トランプ氏の2つの行動に共通するのは、2020年大統領選での再選に向けた不確実要素は取り除いておきたいとの思惑だ。

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習氏は訪日直前に北朝鮮を訪問して金委員長と会い、北朝鮮カードを使った。トランプ氏が金委員長と書簡をやりとりし、直接会談を熱望している事情を知ってのことだ。習氏にとっても関税戦争の影響を受けた経済減速、香港での「逃亡犯条例」を巡る混乱での失態と、トランプ氏との会談での失敗は許されない事情があった。

大阪でトランプ氏は米企業による華為技術(ファーウェイ)への部品販売も認めると伝えた。さらに習氏の橋渡しも受ける形で30日、米朝会談に臨んだ。習氏も激戦州へのてこ入れを望むトランプ氏の意をくみ、農産物の購入を約束した。国内事情を優先した2人の打算で一時的な妥協が成立したものの、それはつかの間の休戦にすぎない。

「公正かつ無差別な貿易を実現する」との首脳宣言を採択した20カ国・地域首脳会議(G20サミット)は、宣言とは裏腹に米中対立の根深さを鮮明にした。

G20開幕直後にトランプ氏が「米国の経済成長重視路線は、すべての国の利益になるはずだ」と発言すると、習主席が「世界経済を前進させるのは中国の『一帯一路』政策だ」「独断主義は排すべきだ」と応酬した。

トランプ氏は大阪でG20サミットの合間を縫い、インドのモディ首相やブラジルのボルソナロ大統領ら10人前後の首脳との会談をこなした。米政府高官は「中国の影響力を排除する包囲網づくりが狙い」と明かす。

習主席も負けていない。ドイツのメルケル首相やフランスのマクロン大統領ら欧州首脳との会談では、気候変動対策などで「多国間主義を守ろう」と接近した。南アフリカなどアフリカ3カ国との首脳会談では「だれが邪魔しても中国とアフリカの協力関係は不変だ」と強調した。G20各国は米中対立のはざまで、双方の陣営づくりに踏み絵を迫られている。

中国は米国の制裁関税で、1~5月の対米貿易額が前年同期比15%も減少した。ハイテク機器の代替供給地となったベトナムはスマートフォンなど電話機の対米輸出が2.8倍に増えた。米国との取引が深い企業は貿易戦争の長期化で脱・中国に動く。

中国勢も米国依存を見切り、東南アジアや欧州に市場を移し始めた。習指導部は米国勢に頼っていた半導体などの内製化も指示した。

中国は貿易戦争のリスクを金融緩和で回避しようと必死だ。中国の債務残高は国内総生産(GDP)比で250%に近づき、3月に過去最高を更新した。米国も連邦準備理事会(FRB)が金融緩和に転じそうだ。米企業の債務残高も既に金融危機時の水準を上回り、金融市場のひずみが蓄積する。世界経済は貿易収縮と金融危機の2つのリスクを抱え始めた。

2020年選挙へ、トランプ氏は中国とも北朝鮮とも、協議再開で結論を先送りした。習氏は米国との覇権争いで長期戦の構えをとりつつ、自らの基盤を揺るがす動きが国内から強まりかねない事態を警戒し、トランプ氏との妥協に動かざるを得なかった。

政治と外交、貿易が密接に絡むパワーゲームが、世界を翻弄する。

(河浪武史、原田逸策)

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