2019年9月20日(金)

伊藤忠が説明会、踊り場脱出に次世代投資など強調

2019/6/27 18:15
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伊藤忠商事は27日、新たなビジネスモデルを作るための次世代投資の戦略や事例を紹介する説明会を開いた。背景には、第4次産業革命の進展でビジネスモデルの変革に迫られる商社の危機感がある。伊藤忠は2019年3月期に3期連続の最高益を達成したものの、今期の利益目標は据え置きし、株価は一時低迷した。成長の踊り場に差し掛かるなか、新たな戦略を模索している。

スタートアップ企業などへの投資の戦略を説明する野田俊介常務執行役員

「巨大プラットフォーマーの躍進やモビリティ革命などゲームチェンジへの対応が求められている」。デジタル戦略を担当する野田俊介常務執行役員は国内の証券アナリスト向けの説明会に登壇し、事業環境の危機感について、こう説明した。

説明会では12件のスタートアップ投資などの案件を紹介した。例えば、電気自動車(EV)を使った中国の商用車管理企業や次世代型のリチウムイオン電池の開発企業、北米の農家向けの電子商取引(EC)運営企業への投資事例を説明した。

伊藤忠は2019年度に、ビジネスの次世代化に向けて、野田常務執行役員の直轄組織に300億円の投資枠を設けると発表。この枠は繊維や食品など既存カンパニーの投資基準に当てはまらない領域を対象とする。特にモビリティと電力、リテール分野を中心に異業種融合や横連携を進める。

野田常務執行役員は「現場からのボトムアップの提案で出資するだけでなく、大きな案件はトップダウンでも仕掛けていく」とも説明する。

出席者からは利益貢献のメドをたずねられたが、野田常務執行役員は「新規株式公開(IPO)狙いの投資ではない。(伊藤忠としての)事業化に持っていきたいが、2~3年は考えないといけない」と話した。

ある証券アナリストは「投資への挑戦は否定しないが、本当に事業につなげられるのかは不透明」と漏らす。野村証券の成田康浩氏は「成果がすぐに見えるものではなく、株価に織り込むのは難しい」と話す。

説明会の背景には、決算説明会などで対応しきれなかった投資戦略をじっくり説明する狙いがあった。伊藤忠は3期連続で純利益を増やし、19年3月期には5000億円に達成した。だが、20年3月期の目標は事業環境の不透明感から5000億円に据え置き、5月末には株価が2000円を割った。

だが、6月3日に1千億円の自社株買いが終了したばかりにもかかわらず、同月12日に伊藤忠はすぐさま700億円の自社株買いを発表した。SMBC日興証券の森本晃氏は「キャッシュフロー創出力に対する自信がうかがえる」と分析。追加の自社株買いからは、伊藤忠の経営陣には自社株が安く見られているとのいらだちが垣間見られる。

さらに7月にはコンビニ事業など流通業の周辺のデジタル化やフィンテックなどを担う「第8カンパニー」が始動する。詳細は8月上旬に打ち出す予定だが、趣旨について岡藤正広会長兼最高経営責任者(CEO)は「プロダクトアウト(作り手優先)からマーケットイン(消費者ニーズのくみ取り)の発想に変えないと商社の未来はない」と周囲に話しているという。好業績のうちに新たな収益目標が描けるか。伊藤忠のスピードが問われそうだ。

(大平祐嗣)

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