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山本篤、あと7センチ世界新に自信 パラ走り幅跳び

義足のアスリートとして日本人で初めてパラリンピックの陸上でメダルを手にした山本篤(37、新日本住設)が止まらない。5月、中国で開催された大会で走り幅跳び(切断などT63)の日本記録を約3年ぶりに更新。たゆまぬ鍛錬に裏打ちされた自信を胸に、東京パラへと突き進んでいる。

山本は5月に日本記録を更新。コンディションなどが整えば「世界記録は簡単にいける」と語る

5月10日の北京グランプリ。前年に好記録が続出したという大会に山本が初参戦した。狙うは世界記録の更新のみ。自身のコンディションは上々で、競技場の環境や天候にも文句なし。舞台は整ったはずだった。

暗転したのは競技開始の直前だ。スタートリストには山本を含めて3人の名前があったが、うち1人がやってこない。「女子選手を含めて競技をしよう」という山本の提案は受け入れられず、2人が休む間もなく交互に試技を繰り返すことになった。

ゆっくりとしたスタートからリズムに乗って一気に加速すると、義足の左足で踏み切るのが山本のスタイル。体は誰よりも高く空中に浮き上がり、右側に傾きながら砂の上へと着地する。

3本目と4本目は踏み切りを数センチオーバーしてファウルとなったが、十分な感触があった。最後の6本目。やや低く感じて「失敗ジャンプだと思った」が、告げられた記録は6メートル70の日本新だった。しかし、目標としていた世界記録には7センチ足りなかった。

その世界記録は昨季引退したハインリッヒ・ポポフ(ドイツ)の持ち物だ。山本にとっては長年のライバルであり良き友人でもある。リオデジャネイロ・パラでは僅か8センチ及ばず銀メダル。悔しい思いをした。

ポポフ不在となる東京パラでの目標を聞かれると「最高のパフォーマンスをすること」と繰り返す。過去3回のパラで獲得したメダルは銀2、銅1の計3個。いまだ届いていない金メダルを渇望しているという感じは見受けられない。

「リオはとにかく金だった。それが平昌パラを見て変わった」という。自身もスノーボードの選手として出場した平昌で、成田緑夢らがまばゆいほどに自己表現をする姿を目の当たりにした。

情報発信や講演活動など忙しい日々を送る山本

アスリートである以上は外形的な結果を求められるのは避けられないが、「内向きに、自分がどうありたいのかを突き詰めるようになった」。日々の練習に真摯に向き合うことと、そこで培った力を見定めた舞台で出し切ることが自らの使命というわけだ。

昨年7月に手術した左肩の回復は順調で、ここから夏場にかけてピークに持っていく心づもりだ。7月にはジャパンパラ、8月はパリグランプリが控える。「自分のコンディションと競技の環境がそろえば世界記録は簡単にいける」。揺るがぬ自信をためらいなく口にする。引退したライバルが残した記録を塗り替えることは通過点。前人未到の跳躍をした先には、東京パラの表彰台の真ん中が自然と視界に入ってくるはずだ。(木村慧)

 リオ大会後「プロ」に
 山本はリオデジャネイロ・パラの後に所属していた企業を辞め、パラアスリートとしてはまだ少ない「プロ」として活動を始めた。障害者雇用という形で企業に所属する選手が増えるなか、「別の選択肢があってもいいかな」と考えたという。現在は4社のスポンサー支援を得ている。
 母校であり、客員准教授を務める大阪体育大を拠点に学生と一緒に練習する姿こそ変わらないが、「競技以外の活動への意識が大きく変わった」という。自らの存在を売り込むべく、ファンへの情報発信や講演活動、メディアへの対応など忙しい日々。パラアスリートの先駆者として、後進に新たな道を示すべく奮闘を続けている。

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