2019年8月23日(金)

世界で広がる無人レジ、消費財メーカーにも影響

CBインサイツ
コラム(テクノロジー)
2019/7/1 2:00
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 世界の小売業で無人レジの導入が広がっている。買い物客がレジで商品をスキャンして自分で精算する「セルフレジ」に続き、レジすら通さずにスマートフォンで自動精算する仕組みを導入する企業も出ている。こうした新たな仕組みは小売業者の店舗運営だけでなく、消費財メーカーにも影響しそうだ。買い物客の購買行動データをより詳細に分析できるようになり、小売店だけでなくメーカーの戦略も変化する可能性がある。

あなたは列に並ぶのが大好きだろうか。もちろんそんなことはないだろう。

店舗での買い物で最も不快なのは、レジ待ちの列だ。そこで各社は様々なテクノロジーに資金を投じ、この問題の解決に努めてきた。当初手掛けたのは買い物客が自分で精算する「セルフレジ」で、これは今でも1ドルショップの米ダラー・ゼネラルや、5ドルショップの米ファイブ・ビローなどで使われている。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週1回掲載しています。

最近の機器は使い勝手が向上している。ファミリーマートは最近、カメラで商品をスキャンし、顔認証技術を使って決済するセルフレジを導入した店舗を横浜市に出店した。

セルフレジを「ステップ1」とすれば、モバイル端末を使った自動精算はレジの進化における「ステップ2」だ。これは買い物客に選んだ商品を自分のスマートフォンでスキャンしてもらい、レジを通さずに精算してもらう仕組みだ。

この分野の先駆けは米ウォルマート傘下の米サムズ・クラブで、数年前に「スキャン・アンド・ゴー」システムを導入した。それ以降、米HEBや英セインズベリーなどのスーパーマーケット、米ウォルグリーンズ・ブーツ・アライアンスなどのドラッグストア、セブン―イレブンなどのコンビニエンスストアがこのシステムを試している。

米ウォルマートが導入した「スキャン・アンド・ゴー」システム(2013年)

米ウォルマートが導入した「スキャン・アンド・ゴー」システム(2013年)

小売り各社はレジ体験をスムーズにするため、なお初期段階の課題に取り組んでいる。問題の一つは、店を出る際に万引きしているように見えるのではないかという買い物客の不安だ。ウォルマート・カナダは先日、自動精算を利用する買い物客のための専用レーンを設けたコンセプト店舗をオープンした。

もう一つの問題は、商品のバーコードをスキャンするのに少し時間がかかり、面倒な点だ。これに対処するために、サムズ・クラブは買い物客が商品の写真を撮影するツールを試験導入している。

3つ目は、重さがまちまちな商品やアルコールなどの商品に関する問題だ。あらかじめ包装しておく生鮮品を増やしたり、年齢確認のために画像認識機能を備えた自動販売機でIDをスキャンしてもらったりするなどの対策が考えられる。

モバイル端末を使った自動精算では細かい点まで解決されつつある一方、「ステップ3」の進化も到来しつつある。これはモバイル端末を使った自動精算から、「ただ歩き去るだけ」へのシフトだ。

このリポートで述べた通り、数多くの企業がマシンビジョン、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」、電子タグ(RFID)などのテクノロジーを活用して精算プロセスの進化に取り組んでいる。

こうしたタイプの店舗を拡大している代表例は、米アマゾン・ドット・コムの「アマゾン・ゴー」や、中国のネット通販最大手アリババ集団の生鮮スーパー「盒馬(フーマー)鮮生」だ。

アマゾン・ゴーは事前に登録したアプリで決済を済ませることができる(米ワシントン州シアトル市の店舗、2018年9月)

アマゾン・ゴーは事前に登録したアプリで決済を済ませることができる(米ワシントン州シアトル市の店舗、2018年9月)

一方、米AiFi、米スタンダード・コグニション(Standard Cognition)、米ジッピン(Zippin)などのスタートアップは従来の小売りも無人レジに対応できるようにする技術の開発を進めている。

■消費財メーカーや小売りへどのような影響があるか

無人レジは小売り各社の労務計画に明らかに影響を与え、在庫を可視化することで在庫品を管理しやすくする。だが、店舗の運営は一つの要素にすぎない。

消費財メーカー各社も無人レジへの移行に備えなくてはならない。その理由は次の3つだ。

(1)次のレベルの購入者データが得られる可能性

モバイルレジや無人レジ技術が広がれば、商品やカゴ(の中の商品)の売り上げについての情報の種類が大きく変わる。

小売り各社は買い物客が棚から何を選び(当初の段階では何をスキャンしたか)、その後何を戻したかを正確に把握し、売り上げに至った商品と棚に戻した商品との差を解明できるようになるかもしれない。どの商品が選択されたかを追跡し、商品カテゴリーごとの大体の関係をもっと的確に理解できるようになるだろう。

さらに、買い物客が店で移動した距離など行動全体がより深く分かるようになる可能性もある。そうすれば、各社は宣伝や広告にさらに磨きをかけることができる。このデータにアクセスし、フル活用できる企業は他社に先行するだろう。

(2)衝動買いのポイントが分散する

レジ待ちの列はなくなるため、レジの周りが定位置だった商品は戦略的に他の場所を目指すようになる。こうした商品はフルサービスの総菜コーナーやネットで注文した買い物の受け取りカウンター、休憩室や待合所の自動販売機などに置かれるようになるかもしれない。

(3)レシートや買い物バッグがさらに重要になる

電話による特別オファーや解決策の提供はこれまで以上に個別化される一方、広告が掲載される場所も変わることになりそうだ。米フレックスエンゲージ(flexEngage)が手掛けるレシートに印字されたクーポンなどや、米IDRマーケティング・パートナーズによる生鮮品をネット注文した際のサンプル提供、さらには買い物袋への広告の掲載などはその一例だ。

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