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高い検査能力と旧態依然の世界観…JRA薬物検出

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2019/6/29 6:30
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中央競馬の厩舎で流通していた飼料添加物「グリーンカル」から、禁止薬物のテオブロミンが検出され、6月15、16両日に出走を予定していた156頭が一括で競走除外となった問題。日本中央競馬会(JRA)は18日、グリーンカルを納入されていた28厩舎(美浦6、栗東22)の365頭を対象に検査を行った結果、テオブロミン陽性馬が1頭もいなかったと発表した。前週の156頭を含めて、今後の出走への支障はなくなったが、「大山鳴動してネズミ一匹」どころか0匹という結論を見ると、「騒ぎは一体何だったのか」という思いに駆られる。

未検査ロットが「検査済み」リストに

事態の経過を改めて整理すると、6月14日(金)の午後、グリーンカルの販売元である日本農産工業(横浜市)から、納入先の厩舎に「製品検査の結果、テオブロミンが検出された」として、回収の申し出があったことで問題が表面化した。翌15日と16日に競馬開催を控え、13日に出走馬が確定していた最悪のタイミング。被投与馬を薬物検査する時間はなく、JRAは当該28厩舎で両日に出走予定だった156頭をすべて競走除外とする窮余の策を取った。一部厩舎には、個々の従業員の判断で投与しなかった馬もいたが、検証する時間もなかった。

グリーンカルは厩舎内で以前から広く使用されていた製品。国内の競馬では「ロット」と呼ばれる製造・出荷単位が改まった都度、検査してから流通させる規定がある。だが、今回テオブロミンの検出されたロットは、昨年12月から流通していたのに、同社が競走馬理化学研究所(宇都宮市)に検査を依頼したのは今年4月。JRAは、「競馬の薬物取締り」と題した冊子で、各厩舎に検査済みのロット番号を記した「飼料添加物等販売リスト」を配布し、納入された製品のロット番号とリストを照合するよう調教師に求めている。未検査のロットならリストに記載はないはずで、それでも使用したなら調教師の過失となる。が、JRAは「調査の結果、調教師に過失はない」とした。つまり、未検査ロットを「検査済み」としたリストが存在したのである。

日本農産工業が14日に回収を申し出た際、関係者に配布した文書には、回収対象として3つのロット番号が記載されており、うち昨年12月から流通していた製品と、今年5月から流通していた製品は、番号が違っていた。同社側が「同じ製造単位」と認識していた製品に、未検査のまま2種類のロット番号がつけられたことになる。今年4月になって検査を申請した経緯に関しては、同社が「年1度の定期的検査」と認識していたと伝えられており、検査前の製品のロット番号が次々に更新され、出荷・流通するという慣行があったことを疑わざるを得ない。

今回の製品も、検査には約2カ月を要している。1つのロットが全量生産された後、2カ月も在庫として抱えるのは民間企業には大きな負担となるため、こうした点も「検査前出荷」の慣行の背景にあったと思われる。

「陽性ゼロ」混入は微量?

365頭が受けた検査で陽性ゼロだったことは、テオブロミンの混入がごく微量だったことをうかがわせる。また、製品は既に半年近く流通していて、被投与馬は繰り返し出走していたと思われる。当然、上位に入ってレース後の薬物検査対象(1~3着)になった馬もいたはずだが、陽性馬は出ていない。同社は15日に自社ホームページで、テオブロミンを含有した原材料を使用していないと表明しており、製造過程(メーカーは同社子会社のニッチク薬品工業)で何らかの理由で混入したことが推測される。

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