2019年7月24日(水)

日産総会、にじむルノー優位
会社側3議案可決 譲歩と引き換え

株主総会
日産の選択
2019/6/25 20:30
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日産自動車が25日に開いた定時株主総会では会社側の議案すべてが無難に可決された。ただ、日産が企業統治強化の要と位置付ける指名委員会等設置会社への移行には、大株主の仏ルノーが強く反発し、日産は委員会ポストを差し出す妥協を余儀なくされた。表面上は「無風」の総会を通じて、ルノーが保有する「43%の株式の力」を日産は見せつけられた。日産にとっては今後、収益力の回復やルノーとの関係の再構築が課題となる。

「ルノーと資本関係を含めた将来像の議論をする」。総会の席で西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)は今後についてこう述べた。

総会では西川氏再任を含む11人の取締役選任案、委員会設置会社に移行する定款変更案など3議案を賛成多数で可決した。このうち日産とルノーの間で「争点」となったのが委員会設置会社への移行案だ。

委員会設置会社は役員人事を決める「指名」、役員報酬を定める「報酬」、事業運営や決算書類が適切か調べる「監査」の3つの委員会を設け、それぞれで社外取締役に大きな権限を持たせる。企業統治の面で厳しい仕組みだ。

日産が元会長のカルロス・ゴーン被告の不正への対応をはっきりさせたいと説明する一方で、ルノー側は「社外取締役の力が増す。ルノー外しではないのか」と警戒感を強めた。実際、ルノーは委員会設置会社への移行について、日産や経済産業省に何度も真意を問いただしていた。

ルノーは最終的に同議案への「棄権」までちらつかせた。定款変更は経営の重要事項を決める特別決議に該当し、成立には総会に出席した株主の3分の2以上の賛成が必要になる。ルノーが実際に棄権すれば同議案は成立が不可能になってしまうため、日産は指名委にルノーのジャンドミニク・スナール会長、監査委にティエリー・ボロレCEOを迎える妥協を余儀なくされた。

ルノーは1999年に日産に出資して以降、日産の総会で常に賛成票を投じてきた。ゴーン元会長が「扇の要」として日仏連合を率いていたからだ。2005年からルノーと日産のCEOを兼務する「1トップ体制」下では、両社の対立はあり得なかった。だが、ゴーン元会長が去り、西川体制が臨む初の定時総会を前に、ルノーの意向を無視しては重要な経営事項が決められない日産の実態があらわになった。

ルノーは今後、「43%の力」をテコに、日産に経営統合を迫るとみられる。スナール氏は日産の取締役会の議長となるJXTGホールディングスの木村康相談役とも接触し、統合への意欲を伝えるなど、地ならしに動いている。

日産の米国事業は不振だ。CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)と呼ばれる技術やサービス革新への対応で自動車の開発費の負担も重荷だ。

日産の18年度の売上高純利益率は2.8%にとどまった。ルノーの5.8%を下回り、トヨタ自動車の6.2%、広州汽車集団の15.6%、米ゼネラル・モーターズ(GM)の5.5%など世界自動車大手に比べて収益力は見劣りする。

「業績回復と並行して、仏ルノーとの将来像を検討する場を持つことは重要だ。スナール氏と突っ込んだ議論をしていきたい」。西川氏は今回の総会で、ルノーとの統合協議について「時期尚早」の一点張りだった従来の姿勢を覆した。

総会では業績悪化への批判も多く、西川氏に対する株主の信任は十分とは言い切れない。「業績立て直しは近視眼的になりがちだ。一方、CASEへの対応、ルノーや他社との再編協議は長期的な視点が必要。両立できるか注視する」(フィデリティ投信の三瓶裕喜氏)。投資家の視線は西川氏の今後の経営手腕に向かっている。

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